第19話 うどんを作ろう
「ねえ、ケンジがまだ饂飩切れないよ」
「うるさいなぁ、ちゃんと切りたいの」
その日。
平野平家、正確には、平野平秋水と、その息子正行は現在、家が改装中のため元妻の長谷川綾子のマンションに一時的に身を寄せていた。
そこの屋上で行なわれた子供の部と大人の部合同の鍛錬会であった。
子供と大人のワンツーマンの鍛錬である。
強度のレベルや性格などを考慮してマッチングして平野平親子は見て回った。
それが終われば汗を流し着替えて、昼食を作る。
大勢で作るのは楽しい。
正行は汁を作る担当だ。
今回は乾物屋でイリコを割安で買えたので、これで出汁を取った。
具はない。
ただ、父親である秋水が多種多様な天ぷらを揚げている。
「こーすればいいんだよ」
その瞬間、台所中に子供の泣き声が響いた。
「どうしたどうした?」
最後に汗を流した大人が駆け付ける。
「あのね、あのね、しげにぃがね、勝手に饂飩切ったの……」
「だって、遅いから……」
なだめ注意する大人たち。
「あー、遅くていいよ」
秋水が最後の磯部揚げを揚げて言った。
そこにスマートフォンの鳴る音がした。
それが全ての始まり。
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