第15話 仲間でもなく敵でもなく

――『ジック』と『バイス』という組織が暗躍している

 彌神辰巡査部長から事の経緯を聞いても平野平秋水、正行の心境は穏やかではなかった。

 石動は黙っていた。

 そこに猪口がやって来た。

 入れ替わるように立ち去ろうとする三人に猪口は体を広げて止めた。

「ここからは俺たち、国がやる。お前たちは待っていろ」

「どうしてですか⁉ 母ちゃんを誘拐されたんですよ!」

「綾子さんのことも安心しろ! これをしくじれば、国際問題になる。君たちでどうにかなる問題じゃない!」

 六個の視線に猪口はひるみそうだったが負けられなかった。

「俺は、仲間だ。敵じゃない!」

「じゃあ、なおのこと、俺たちで始末をつけます。主殿」

 その言葉に猪口は力が抜けた。

 猪口の横を秋水たちが通り過ぎる。

――主殿

 秋水の言葉は猪口を敵と認識していないことをの証左だった。

 でも、同時に仲間もとも思ってないことの証でもあった。

 涙が出た。

 

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