第2話 チャーハン
「チャーハンが食いてぇ」
愛車の整備を終えた石動と秋水は交互にシャワーを浴び洗い立てのシャツとズボンでのん気にテレビを見てた。
ほぼワイドショーであり、二人は無感情の表情と感情で見ていた。
――全然面白くねぇ
言葉に出さずとも二人は思った。
そんな時、秋水が言ったのが「チャーハンが食いてぇ」であった。
――勝手に作ればいいでしょ?
石動はそう言いたかったが、昼近くで整備を手伝ってくれたので、これも手伝おうと思った。
まずは冷蔵庫を見る。
石動の妻・ナターシャを病院へ送るついでにスーパーで買い物すると綾子が言った通り、目ぼしい材料はない。
「ビーマンに魚肉ソーセージ、卵に長葱……あとは保温したご飯。使えるのは、これぐらいですね」
「そうだねぇ、五目チャーハンといこうか?」
台所に立つ。
「まずは、ピーマンを小角切りにする」
ピーマンの下処理をして秋水が石動に言う。
「小角切り?」
石動は包丁を持ったまま呆然とする。
「……千切りできる?」
思わず秋水が聞く。
「は?」
軽いため息を吐いて秋水が横に立つ。
縦に太めにピーマンを切ると横にして切る。
「なるほど」
元々は好奇心旺盛な男である石動は見様見真似で他の長葱と魚肉ソーセージも小角切りにする。
その間に秋水は卵をお椀に割り入れて解く。
「じゃあ、次はフライパンに油を入れて中火で温めピーマンを適度に炒める」
勝手知ったる秋水はフライパンを出して油を入れる。
「で、卵を入れて小粒の半熟状態にしたらご飯を入れ魚肉ソーセージも入れる。酒を入れてアルコールを飛ばして塩コショウ、最後に鍋肌から醤油を入れて……完成」
二人分の分け皿に盛り食べてみる。
「うまい!」
卓で食べた石動の素直な感想だ。
「本当は中華街レベルの火力なら、もうちょい軽くできるんだがな……」
秋水は幾分不満気だ。
「たっだいまぁ!」
そこにぱんぱんに詰まったマイバックを持って綾子が来た。
「あら、チャーハン」
目ざとく見つける。
それでも、まずは報告だ。
「石動さん、ナターシャさん、少し待つみたいだから先に帰ってきちゃった」
「ああ、大丈夫です。帰りは俺の車で迎えに行きます」
「……」
その様子を秋水はつまらなそうに見ていた。
「綾子」
秋水が話に割り込む。
「チャーハン食わないか?」
そう言ってレンゲに乗ったチャーハンを綾子に近づける。
綾子は、それを口に入れる。
秋水がレンゲを抜く。
「うーん、やっぱ、秋水の作るチャーハンは美味しい!」
「……あー、あ。ブラウスに飯粒ついているぞ」
この二人のやり取りをチャーハンを食いつつ見て石動は心で叫んだ。
――あんたら、結婚しろ‼
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