安定の……

 とある午後、王子が物をとりに自室に戻ると、王女が本を開いたまま寝台にもたれかかって眠りに落ちていた。それを覗き込んで従者はあまりに安らかな寝顔に感心する。

「安心し切った顔してますね」

「よほど疲れていたのだろう。起こすのも可哀想か」

「それでここでとは……なんというか相変わらず……」

「寝ていてもアウロラは可愛いものだな」

「……もう聞き飽きましたよその台詞」

 ため息と共に思い切り嫌そうに言われて王子は首を傾げる。そんなに口に出して言った覚えもない。そう尋ねると、即座に突っぱねられた。

「口に出さなくても殿下を見てるだけで聞こえてくるんですよ」

「幻聴までするとは……疲れすぎてないか、ロス」

「殿下が言う台詞ですかねそれ」

 この妹馬鹿が、と内心で悪態をつくものの、それだけよく見ている従者も従者である。


 安定の主従漫才。

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