妹馬鹿の名において

「殿下、お待ちを」

 昨今の大臣はいつになく執拗だ。

「殿下よろしいですかな」

「殿下、お話が」

「殿下、今日こそご覧いただきましょう」

 悉く逃げられらること数回、遂に捕まる主人である。どさりと卓に降ろされた書類束を開くと、中から出てきたのはこれでもかという数の令嬢の身上書。

「さて殿下、この度は……」

「大臣」

 落ち着き払った一言に老人は口を閉じる。いや、落ち着きに見えるのは上辺だけだ。

「妹の時にもなどと愚かな考えはまさか持ってはいないな?」

「殿下……」

「話は以上だ」

 本題どころか、目が据わっております、とも言わせてもらえなかったと言う。




 百四十字越え。自分のことより。お約束ですね。

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