お兄様のぬくもり

 王子の朝は早い。まだ空気も冷たい時分にもう身支度を整え稽古に向かう。

 そんな日常を知る妹も、寝ぼけまなこで兄の部屋まで来る。

「お兄様……あふ、行ってらっしゃい」

「また来たのか。朝餉まで時間もある。まだ寝ていなさい」

 穏やかに諭し、稽古場へ急いだ。





「またここで……」

 自室に戻ると妹が自分の寝巻きを羽織って布団にくるまっている。実に幸せそうな寝顔を見てしまうと怒るに怒れず、逆に微笑が浮かんでしまう。

「アウロラ、起きなさい」

 布団越しに手をかけると、妹はもぞもぞと寝返りを打った。

「もすこし……いいかおり……」

 起きているのか、夢を見ているのか、あったかい、と満面の笑みの答えが返ってくる。

 ——起きるまで、書でも読むか。

 気持ち良さげに目を瞑っている妹の顔を眺めながら、兄は本を片手にその脇に腰掛けた。



 ***

 140字破りシレア城。宇部松清様からの期待を受け取り書きました。

「お兄様のぬくもり」=「脱ぎたてパジャマとか、さっきまで寝ていたお布団」by 宇部様。


 140字で収めようと頑張りましたが無理でした。今回はご容赦を。宇部様、書きました。

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