第59話 【幕間】【幕間】軽い気持ちで覗いた結果
本日の宿屋の一室にて、軽装状態のシノアリスは腕を組み唸りながら己のステータスを見ていた。
ステータス画面はシノアリスにだけしか見えない。
ベッドの上で毛づくろいをするくーちゃんや採取した素材の整理をしている暁からは、シノアリスが空虚を見つめているようにしか見えない。
だが、真剣な顔をしているので考え事をしているのだろうと、そっとされていた。
そんな配慮をされているとは知らないシノアリスは自身のステータスに対し、とても叫び出したい気持ちでいっぱいだった。
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・シノアリス
【種族:人族】
【職業】錬金術士
【体力】500/500
【魔力】208500/208500(+200000)
【スキル】
・鑑定 Lv.MAX
・薬神の眼
・妖精の眼
・錬金術 Lv.MAX
・創作 Lv.1
・生活魔法クリーン Lv.7
【エクストラスキル】
ヘルプ Lv.3
【
・くーちゃん
【加護】
・
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増えてる、明らかにシノアリスの魔力が増えている。
奇声をあげたいが、傍にはくーちゃんと暁がいるので必死に抑え込んだ。
一体何が原因なのかシノアリスには全く見当がつかない。
確かに魔力は、酷使し魔力切れを何度か起こすことで徐々に魔力が増える、という説もある。だがデメリットとして自身の寿命を極度にまで削ってしまう。
なので魔力を増やすためには、環境は勿論のこと長い年月をかけ自身の体に負担をさせないように少しづつ増やしていくのが正しいやり方でもあった。
だがしかし、シノアリスの増え方は明らかに異常そのものである。
「これって加護の影響なのかな?」
ヘルプで加護の影響で魔力が増えるのかを検索するが該当はない。
加護は全く関係ないのであれば、なにが原因なのか。
「よし、忘れよ!」
悩みに悩みぬいた結果、シノアリスはスルーを選択した。
そもそも鑑定ではシノアリスの魔力が見れない、またスキル鑑定でも魔力をみることはできない。
妖精の眼を取得している人物もそう多くないだろう、ならば焦る必要などないとシノアリスはこの件をスルーが一番だと選択した。
尚、シノアリスは知らないが魔力を見る方法は一つだけある。
それは冒険者ギルドや魔術研究塔、魔法教会で扱う“魔力鑑定機”によって、その人物の魔力を見ることだ。
冒険者ギルドでは、ギルドカードを発行する際に必ず登録者の魔力を鑑定するようになっている。
またナストリアにはないが、大きな都市では貴族平民問わずに学問や技術を伸ばすための
シノアリスが魔力鑑定機の存在を知らないのは、所属する商業ギルドでは魔力鑑定などは行われないからだ。
万が一冒険者ギルドでカードを発行することになればバレる可能性がある。
が、それを知らないシノアリスは呑気に鼻歌を零しながらステータスでなにが見れるのかをヘルプに聞いていた。
「へぇ、ステータスには称号とか耐性とか色んなのが見れるんだ」
ヘルプの情報によれば、シノアリスの目の前に表示されているステータスは簡易式のようだ。
詳しい詳細を見るためには、対象の名前を部分に触れることや最初から指定することで見れるという。一体どんな詳細が見れるのか、シノアリスはワクワクとしながら自身の名前に触れた。
するとうっすらと透けた紙は消え、ヘルプと似たような大きなボードが表示される。
先ほどよりもたくさん書かれた情報量に、シノアリスは感嘆の声を漏らした。
「うわぁ、すっごい」
早速見てみようと一番最初の項目へと視線を移すも。
【名前】シノアリス
【年齢】15歳
【体重/身長/胸のサイズ】
「おぎゃぁああ!?」
「「!?」」
女性として隠したい項目が見えた瞬間、シノアリスは思わず何かが生まれたような奇声をあげながら素早い動きで、隠したい項目を叩きつけた。
勿論、突然の奇声と奇行に走ったことで驚いた暁とくーちゃんの視線がシノアリスへと向けられる。
「シノアリス?どうかしたのか?」
「おぎゃー!?こっち見ないでください!!暁さんのエッチ!!!」
「え!?いや、あの、その、すまない!」
もう一度言うが、ステータス画面は妖精の眼を発動させているシノアリス以外見えない。
なので両手を空虚に伸ばしているシノアリスから、突如エッチ発言を言われた暁は大変困惑しつつも素直に謝罪を言い、背を向けたのだった。
「にゃー?ごしゅじんさま、なにをしてるんですか?」
「乙女として見られてはいけない部分を隠してる」
「?なにも見えませんが?」
「・・・あ」
くーちゃんの言葉にようやく、このステータス画面が第三者には見えないことを思い出す。
だがしかし、見えないからと言って自身の体の詳細を晒したくはない。
シノアリスは妖精の眼を解除することでステータスを消した。
「・・・シ、シノアリス。もう、いいだろうか?」
「あ、はい!暁さんもう大丈夫です」
恐る恐ると尋ねてくる暁は、シノアリスはさきほどの自身の発言を思い出す。
暁には見えていないとはいえ大変申し訳ない事をしてしまった。
謝ろうと此方を振り向くのを待っているも、一向に振り返らない暁にシノアリスは首を傾げた。
「暁さん?」
「あ、いや、その・・・ほ、本当に振り向いて大丈夫か?」
「え、はい。もう大丈夫ですよ」
「ほ、本当に大丈夫か?」
「大丈夫ですよ?」
「そ、そうか、なら振り向くがいいか?」
「?どうぞ?」
ギギギと錆びついたような動きで振り返る暁に、シノアリスは頭上に?を浮かべつつも暁が振り返るのを待った。
目が合った瞬間、暁の体が大きく跳ねるもシノアリスが何も言わないのに安堵したのか、ようやっと体の向きを変えた。
「暁さん、さきほどは失礼しました」
「い、いや・・・気にしてないよ、うん」
心配して声をかけた相手からエッチ発言をされたのにも関わず、優しい対応をする暁の心の広さにシノアリスは感動した。
ふと、シノアリスの中で好奇心が疼いてしまったのか、暁のステータスを見たい衝動にかけられた。
「・・・」
「シノアリス?」
見たい、暁のステータスを。
そんな邪な感情が顔に出ているのか、若干後ろに身を引く暁。
だが人様のステータスを勝手に見るのは失礼ではないのだろうか。
先ほどシノアリスが隠したい項目を勝手に晒されているようなものである。たとえ相手に見えないとしても勝手に覗くのは失礼ではなかろうかとシノアリスは一人悩み唸る。
「・・・暁さん」
「なんだ?」
「暁さんのステータス、見ても良いですか?」
「・・・え」
そう考えた末、シノアリスはストレートに暁のステータスを見せてくれと頼んだ。
許可を求められた暁からすれば、自分にはステータスが見えないので安易に許可しづらいものであった。
目を輝かせて暁の返答を待つシノアリス、期待の眼差しを向けてくるシノアリスに返答に困る暁にくーちゃんは、にゃぁんとシノアリスを呼ぶように鳴いた。
「ごしゅじんさま、暁自身が知りたい部分だけをみさせてもらうのはどうでしょう?」
「知りたい部分?」
「はい、ちなみにステータスはどんなことまで見れますか?」
「えっと名前でしょ、職業にスキル、称号、耐性、加護とか沢山見れるよ」
「な、なら俺のスキルと耐性を教えてくれないか?」
指折りしながら見れる項目を教えるシノアリスに、暁はくーちゃんのフォローに気付いたのか直ぐに便乗する。
本人からの許可を得たシノアリスは早速、暁の向けてステータスを表示させた。
・暁
【種族:鬼人】
【職業】無し
【体力】65000/65000
【魔力】0/0
【スキル】
・気配探知
・急所看破
・攻撃魔法耐性
・忍耐
シノアリスは暁の体力をみて思わず目が飛び出しそうになった。
これが鬼人と人の違いなのか、自身との体力の差に異常なくらい違っている。そっと自身の腕と暁の腕を見比べる、シノアリスは静かに体力をつけようと心の中で誓った。
「シノアリス?」
「あ、すみません。えーっと暁さんのスキルは気配探知、急所看破、攻撃魔法耐性に・・・あ、忍耐がありますね!」
「・・・忍耐か」
忍耐のスキルは、鮮血将軍猪人族がもっていたスキルと同じである。
過酷な環境で命の危機に晒されるほどの経験をした者に取得されるスキルのため、奴隷を経験して取得したスキルだと思うと何とも言い難いものがあった。
「・・・ぁ」
普段空気を読んでいないシノアリスも、自身の失言と空気が重くなったことに気付いたのか慌てて声を張り上げた。
「えっと、その!耐性!暁さんの耐性を見てみましょうか!」
「・・・あぁ、そうだな」
「えーっと、耐性は・・・」
【耐性】
・痛覚耐性
・毒耐性
・麻痺・電流耐性
・熱耐性
・病気耐性
「・・・・おぎゅぅ」
耐性というのは、スキルとは違い環境条件や一定の攻撃に耐えることで自然に取得するものだ。
簡単に説明すれば、毒耐性がある者は軽度の毒を摂取しても無効化されるなどがある。
それを踏まえて、これだけ数多くの耐性を取得している暁にシノアリスは、盛大な地雷を踏みぬいた気持ちで満たされていた。
「シノアリス?」
物凄く答えづらい耐性のオンパレードに渋面で静かに撃沈するシノアリスを不思議そうに首を傾げる暁に、シノアリスは誓った。
身勝手な好奇心でステータスを覗かない。
そう、心に強く決めたのだった。
*****
本日の鑑定結果報告
・魔力鑑定機
大将の魔力地を鑑定する装置。
魔法教会の人間と賢者アキラの共同作業によって作られた装置。
・耐性
スキルとは違い環境条件や一定の攻撃に耐えることで自然に取得するもの。
(例)毒耐性を持っている者は軽度の毒でも無効化できる、など。
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