とある少女の好きな物

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 友達と遊んでても、いつも楽しくないの。

 なんでだろう。


 私は、棒切れ振り回したり、かけっこしたりしたいけど。

 皆は、おままごととかおしゃれの遊びに夢中。


 うーん、私は変なのかな?


 お話を聞くのは好きだし、絵を描いたりするのも好き。


 おままごとだって嫌いじゃないけど、したい事じゃないの。


 そんな私はいつも、一日の終わりに、お母さんにおねだり。


「おかあさん、えほんよみきかせて!」


 寝る前にベッドにもぐるこむと、お母さんも横にきてくれる。


 今日も、私はお母さんに絵本を読んでもらうんだ。


 持ってきてくれた絵本は、いつもの絵本。


 それは大昔にあった、魔王と勇者の戦いについての内容。


 寝る前に絵本を読み聞かせてもらうのが私の日課。

 私は冒険とか戦いの話が好きだから、今日の絵本の読み聞かせをわくわくしながら待ってるの。






 遠い昔に、魔王と勇者は剣を交わした。


「勇者、私と勝負をしようではないか。勝った方が、この世界を支配するのだ」

「魔王、お前などに世界を支配させやしない。勝つのは私だ!」


 弱肉強食、実力がある者しか生き残れない魔の国。


 とっても厳しい国で育った魔王は、人間の国を侵略しようとしていました。


 魔王は、たくさんの魔物を従えて人々を襲います。


 しかし、人間はただ黙って侵略されているわけではありません。


 強大な力を持った、勇者という存在が魔王を倒すために動き出しました。


 勇者は多くの仲間をつくり、伝説の武器を見つけて、魔王に挑みます。


 大きな力で、襲い来る敵を迎え討つ。その戦いは、とても苛烈で激しいもの。


 国がいくつも滅んでしまいました。


 しかし、どんな戦いにも終わりはやってきます。


 激しい戦いの末、勇者が勝ちました。


 勇者は剣を振り上げて高らかに宣言。


 恐怖におびえる時代が終わった事を述べて、人々を安心させました。






 読み聞かせが終わった私は、いつも通りお母さんに感想を伝えます。


 私は女の子だけれど、こういった強くて熱い戦いの話が大好き。


 でも、皆はおしゃれの話とか、あくせさりの話とかの方が好きみたいだから、話が合う人がいないのが寂しい。


「おかあさん、わたしもみんなみたいに、おしゃれの話とかあくせさりの話とかしたほうがいいのかな。そっちのほうがみんなよろこぶのかな」

「そんな事ないわ。だっておとぎ話の英雄さんやとっても怖い魔王さんだって、女の子じゃない」


 閉じた絵本を再び開くと、とっても強い勇者様や怖い魔王は、確かに女の人。


 女の子でも、戦いが好きだったり、熱くて激しい物語が好きでもいいんだと分かって私はすごく安心。


「わたしおっきくなったら、もっとじょうぶになって、ゆうしゃさまみたいになる!」


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とある少女の好きな物 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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