第193話 あれなんか急に眠気が
「な、なるほどっす。この子もメルテラ殿と同様、中身は大人ってパターンっすね」
「ううん、僕は正真正銘ガチの赤子だよ。生まれてまだ半年経ってないくらい」
「もっとヤバいパターン来たああああああああああああああっす! 名前は!? 生まれたのはどこっす!? なんでそんなに流暢に喋れるっす!? 親は!?」
「ちょっ……」
記者魂が爆発したのか、物凄い勢いで訊いてくるマチルア。
「メルテラ殿のことを記事にしたときも大反響だったっすよ! これはそれを超える大スクープかもしれないっす! ハァハァ!」
目が血走り、鼻息が荒い。
マチルアはかなり興奮しているようだ。
『し、しまった……面倒そうな相手に余計なことを言ってしまったかもしれない……』
『そのようですね。ここは潔く、真実を洗いざらい自白してみては?』
何の参考にもならない提案をしてくるリントヴルムはもちろん無視する。
「そういえば、以前から赤子の冒険者が誕生したという情報があったような……あまりに荒唐無稽で、紙面には載せられないと一蹴されてたっすけど、まさか本当だったっすかあれなんか急に眠気が……」
マチルアが突然よろめき出す。
フラフラと近くに設置されていた応接用の椅子に座ると、そのまま眠ってしまった。
「レウス様、もしかして何かされましたか?」
「うん、ちょっと面倒そうだったから。目を覚ましたときには、きっと今のは夢の中の話だと思うはずだよ」
俺が強制的に眠らせたのだ。
せっかく俺は第二の気ままな人生を謳歌しているというのに、新聞なんてものに掲載され、大々的に拡散されたりなんかしたら堪ったものではない。
そうして新聞社を後にしたところで、ファナが切り出す。
「ん。武闘大会。出る時間ありそう?」
「そうですね……今のところそれらしい情報もありませんし……」
メルテラは仕方なさそうに頷いた。
「決まりね! 腕が鳴るわ!」
アンジェはもう出場する気満々で腕を振り回している。
「さっき新聞に書いてたけど、勇者祭はもう明日から、武闘大会は明後日から開催みたいだよ? 今からでも出場できるのかな?」
道行く人に訊いてみると、どうやらちょうど今日まで出場者を受け付けているそうだ。
受付会場についても教えてもらった。
「あれが闘技場だね」
「ん、すごい大きい」
そうしてやってきたのは、武闘大会の会場でもある闘技場だ。
普段から剣闘士の試合や魔物の討伐パフォーマンスなどが行われているようで、数万人もの観客を収容できる規模らしい。
その闘技場の一画で出場者の受付が行われていた。
「武闘大会に出たい」
「あたしもよ!」
「あなた方が? 失礼ですが、誰でも彼でも出場できるというわけではありませんよ?」
「「そうなの?」」
受付の女性に言われて面食らうファナとアンジェ。
「例年は希望者全員を受け付けていたのですが、年々希望者が増加してきたこともあり、今年から最低限の実績のある方のみとなったのです」
「実績というと?」
「そうでずね。例えば前年で相応の成績を残された方でしたり、どこかの騎士団に所属されている方でしたり、あるいはCランク以上の冒険者の方でしたり」
どうやら冒険者でも構わないらしい。
「ん、Aランク」
「あたしもよ!」
「っ!? こ、これは失礼しました!」
ドヤ顔でAランクの冒険者証を見せた二人に、受付の女性が慌てて謝罪する。
「師匠はどうする?」
「僕はやめておくよ。あんまり目立ちたくないからね。メルテラは?」
「わたしも遠慮させていただきます」
「それは助かるわ。さすがにあんたたちには勝てそうな気がしないもの……」
アンジェが安堵している。
「では代わりに我が参加しよう。何をするのかよく分からぬが、何となく面白そうだ」
「……うーん、リルこそやめておいた方がいいと思う」
「む? そうか?」
手加減が苦手なリルが出場したら、死人が大量に出そうだからな。
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