第59話 師匠と冒険したい
街に戻った俺たちは、ダンジョン内での出来事をギルドに報告した。
予想を超えた報告内容、そして俺が亜空間で持ち帰った異質な魔物たちの死体に、ギルド中は大騒ぎになった。
「おいおいおい、魔族に魔改造された魔物にオーガ二千体だと!? マジかよ、それは!? よく生きて帰ってきたな!?」
ギルド長が直々に顔を出して、詳しい内容を訊いてきたほどだ。
「――という感じで、彼のお陰でどうにか生きて戻ってくることができました」
バダクが詳細を語り終えると、ギルド職員たちの視線が一斉に俺の方を向く。
一体お前は何者なのだと、全員の目が問いかけてきていた。
俺は赤子らしくキョトンとしながら、
「んー、僕、赤ちゃんだからよく分からないやー」
「「「今さらそれは無理があり過ぎるだろうっ!」」」
「……なるほど。あまり活躍し過ぎると面倒なことになるんだな。今後はちょっと気を付けた方がいいかもしれない」
ギルド長や職員たちからの質問攻めをどうにか切り抜けた俺は、その真実に辿り着いていた。
このまま行くと、有名になり過ぎて生まれ故郷にまで噂が届いてしまうかもしれない。
そうなるとまた色々と面倒そうだし、今後はもう少し赤子らしく自重していくとしよう。
――マスターの考える「赤子らしい」がそもそもズレているのですが。
なんだかまたリントヴルムの声が聞こえた気がするが、これも気のせいだろう。
そんなことを考えていると、ファナが声をかけてきた。
「レウス……師匠」
「師匠?」
「ん。レウスは師匠」
いつの間にか弟子ができていた。
「何で師匠?」
「私を強くしてくれたから。……師匠はこれからもソロ?」
「んー、そうだね……」
その方が楽と言えば楽だ。
前世でも俺は時々パーティを組むことはあったが、基本的にはずっと一人だったし。
べ、別に友達がいなかったわけじゃないぞ!?
「私は師匠と冒険したい」
「それって、僕とパーティを組みたいってこと?」
「ん。師匠から色々と学びたい。絶対もっと強くなれる」
そうだな……。
本当にファナを弟子として鍛え上げてやれば、彼女を隠れ蓑にすることができるかもしれない。
それに――
俺はファナの胸に飛びついた。
谷間に顔を挟みながら言う。
「いいよ、ファナお姉ちゃん。一緒に冒険しよ!」
「ほんと? 嬉しい」
俺も嬉しいぜ。
なにせパーティを組めば、この胸の感触をいつでも堪能することができるわけだからな……ぐふふふ……。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
そこへ勝ち気な少女が割り込んできた。
アマゾネスのアンジェだ。
「アンジェお姉ちゃん? どうしたの?」
「あ、あんた、言ってたわよねっ? あたしも、そいつみたいに強くできるって……」
「もちろんできるけど……お姉ちゃんには必要ないんじゃなかったっけ?」
「う……あ、あのときは確かにそう言ったけど! 言ったけど……」
段々と声が尻すぼみになるアンジェ。
どうやら今回の冒険でファナとの力の差を痛感し、それでプライドを捨てるほど焦ったのだろう。
「いいよ。お姉ちゃんも強くしてあげられるよ」
「ほ、ほんとにっ?」
もちろん断る理由などない。
「うん。じゃあ、これから治療してあげるから、ファナお姉ちゃんの部屋においでよ」
「治療?」
「大丈夫、全然痛くないから」
むしろとっても気持ちのいい治療だよ……ぐふふ……。
「ファナお姉ちゃんが強くなった秘密は、魔力回路を整えたからなんだ。そうすれば、身体強化魔法を常時、自分にかけ続けることができるようになるはずだよ」
「あたし、魔法なんて使えないんだけど……」
「大丈夫。身体強化の魔法は簡単だから、ちょっと練習したらすぐに使えるようになると思う」
そんなわけで、アンジェを連れてファナの家へ。
一体何をするのかと警戒しているアンジェに、俺は言った。
「それじゃあ、今から治療を始めるから……服を全部脱いでね」
「……へ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます