第27話 授賞式:妹

 私はねねちゃんにお祝いをしてもらった日から、ねねちゃんと連絡を頻繁にとるようになった。クレープのお礼をツリッツァーのDMに入れると、登録しなさいと返信で連絡SNSアプリ、ルインの連絡先を教えてくれたのだ。

 そして、今、話している内容はと言うと……。


〝あなた、買っちゃったんならもう、渡してしまいなさいよ。悩んだってしょうがないでしょ!渡すんだから!それとも用意しておいて、渡さないつもり?もう、会う約束したんでしょ?なら、自信を持ちなさい、トップなんだから〟


 授賞式の後の話である。ケンさんに会う時のアドバイスを、ねねちゃんにして貰っている。

 ぐずぐず悩む私だが、今、頼もしい、ねね先輩が背中を押してくれているのだ。



――――ピコン



 すると、突然、私のスマートホンが鳴り、メッセージが届いたことを教えてくれた。もうすぐ、出番だが、とりあえず、確認の為、通知を開く。すると……。



「ケンさんからだ……」




 そこには、ケンさんからのメッセージがあった。




〝今、三ホール、出入り口で待機中。受賞はウェブ配信で見届けます〟




 どうやら、ケンさんは今から外で待っているらしい。中で見ていけばいいのに。



「そんなに、会いたいのかな。そんなに早くからスタンバイしているなんて、やばい。どうしよう、落ち着け私!」


「はぁ、緊張してきてしまった」


 そう呟くと、ガタンと控室のドアが開き、私を導く声がした。


「るみさん!出番です!行きましょう!」


 授賞式の担当者が、こちらですと、私を案内する。


 そう、今日は授賞式なのだ。


 そして、私はこの後、あの人に会うの。


 緊張は加速している、けれど、それと同時に、こんなに幸せな気持ちに包まれることは初めてだから、どうしていいのかわからない。


 この気持ちをどう叫べばいいかわからない。


「あ、いい事、思いついた」

「そうだ、そうしよう」


 しかし、私は急に素敵なことをひらめく。


 そしてそのアイデアを決行しようと決めて、立ち上がった。


 純白の美しいドレスを身に纏い、輝くピアスとネックレスを見せびらかしながら前へと進む。透明で、ダイヤのように光るパンプスは、どこかの物語の、お姫様のような気分にさせてくる。



「さて、皆さんお待ちかねの、二〇二十年のトップガール!」




「るみさんの登場だあああああああ」




――――ワアアアアアアアアア




 どこかの有名なアナウンサーは私の名前を叫び会場を盛り上げる。私は、スポットライトが眩しい、会場に顔を出すと、黄金に輝く金の座椅子へ一歩ずつ、足を輝かせながら進み、静かに座った。


「これが、トップ……」


 私は目の前に広がる、私を祝福する輝き立ちを眺め。改めてトップになった感動を、強く感じることが出来た。


 そして、アナウンサーは私に受賞の挨拶を促す。


「初めて僅か一年足らずの快挙……総ファロワー数七十八万人、誰もが感動し、誰もが心温まる時間を届けてくれた、るみさんに、受賞のコメントをしてもらいましょう、るみさん、マイクの方へどうぞ」


「はい!」


 私は立ち上がり、目の前にある、クリスタルのマイクを握る。緊張で手汗が増えたのだろうか、マイクを滑らせないか心配になる。


 そして、私は一言一言、大好きなファンへ、大切な皆へ言葉を届ける。


「この度は、私の為に授賞式を開催してくださり、ありがとうございます。正直、今も信じられていません。とても嬉しく、感謝でいっぱいです。そして、ファンのみんな!沢山私のお話を聞いてくれてありがとう!お話をしてくれてありがとう!それが何よりも嬉しく、幸せです。本当に本当にありがとう」


「そして、私の大好きなねねちゃん!トップのお祝いをしてくれてありがとう!相談に乗ってくれてありがとう!私が明るく生きられる世界を教えてくれてありがとう!今度必ず、お礼をします」


「あと、最後に大きな投げ銭をしてくれた方。誰だかわからないけれど、とてもびっくりしたし、嬉しかったです。いつか、お礼をさせてください」




「そして……」






「私を最後まで、愛し、応援してくれたケンさん……」






「あなたへの感謝は語りきれません……」






「だから……」

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