第26話 恋かもしれない:妹

 ねねちゃんは聞きたいこともあるし!と私を引っ張り、連れ出した。そして、ふたりで今、駅前のクレープ屋さんに並んでいる。突然のお誘いに、まだ、ついていけてないが、私は誰かと学校帰り、お店に寄ったりして遊んだことが無かったので嬉しいのと、ねねちゃんとまた会えたことがさらに、笑顔を増加させていた。


「はい、チョコクレープ!奢ってあげるって言ったのに、もっと、豪華なの頼めばよかったじゃない!アイス乗せとか!」

「そういうの、食べたことないから、食べ方がわからなくて……」

「はぁああああ!?そんなもん、普通に食べればいいのよ!あなた意外と面白いのね」


 ねねちゃんは私が食べたいといリクエストしたクレープを持ってきてくれた。トップになったお祝いに、何か食べたいものをいいなさいと、私をショッピング街へ連れ出し、強引に聞いてきたのだ。私は、戸惑いながらも嬉しくて、目の前にあるクレープ屋さんのチョコクレープが目に入ったので、頼んだ。


「あの、ねねちゃんありがとう……でも、どうして……」


 しかし、嬉しいのだが、ねねちゃんは何故、私と今一緒にいてくれるのだろうかと、私は疑問を頭の中で回していたので、聞いてみた。だって、ねねちゃんはトップを目指していたのに、直前で私に抜かされたわけで……。


 が、よくわからない答えが返ってきた。


「私はあなたのこと、気に入ったからよ!てか、トップになったというのに、なんでそんなに元気がないの?ちょっと、もっと堂々としなさいよ!」

「え、あ、うん!いや、そのちょっと……」


 気に入ったとは、何のことだろうか。ねねちゃんの一位の座を奪った私を気に入ったとは、どういうことなのかわからず、とにかく頭がくるくるしていた。

 私は疑問を持ったまま、クレープを二人で食べ終えると、その場に座ったまま、そうそう聞きたいことがあるのよ、とねねちゃんが話を始める。


「ねぇ、あなたケンさんのこと、どう思ってるの?あの人、本気で、あなたのこと好きよ!」

「ちょ、その話!?聞きたいことってそれ!?え、ちょ……」

「ねぇ、会いたいと思わないの?私は何故か会ったことがあるけれど、あれはあなたの事本気で好きよ、マジよ」

「ちょっと、ねねちゃん声が大きい!恥ずかしいから!」


 私はトマトのように膨れて頬を染める。ねねちゃんの聞きたいことというのが、とんでもないこと過ぎて、くるくるの頭は爆発寸前だ。


「ねぇ、今度、トップになったあなたの為の授賞式があるでしょ?今年は初の試みで、地上波全国放送だとかで豪華みたいよ。そんな、素敵な授賞式の後、呼び出してお礼くらいしたら?」

「かなりの投げ銭、貰ってるんだし!お礼くらい、ファンにはしてあげた方がいいわよ!あと、配信は辞めちゃだめよ、辞めたら許さないから」


 そう言い捨てると、話はこれでおしまいよ。帰りましょ、と言って、ねねちゃんはクレープのごみを、ゴミ箱へ捨て始める。

 その後は、二人で駅に向かい、帰る方向は逆だからと改札で別れたが、まだ、私は顔を真っ赤にして、パンクしていた。




「ど、どうしよう。こ、これは……」




「恋なのかな……恋……かも」

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