108話目

 朧気に孤独に歩く怪物の足音重く音無に帰す


 気付けば詩を口遊んでいた。ただひたすらに寂しい詩。

 街明かりが眩しくない、閑散とした田舎の街を、猫背で俯いて歩く僕は、傍から見れば怪物かもしれない。浮かぶ夜月は煌々と、暗がりの街を、ただそっと包み込む。

 右手の濡れたナイフさえも、光らぬように。

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