源氏物語ヤロウ①

源氏物語ヤロウ。

どんなヤツなのか、気にはなっていた。

そりゃ、正直、気分は良くない。

胸クソ悪い。

でも。

源氏物語まで引っ張り出して、色んな女と遊んでたヤツだ。

それなのに。

あの小夏が、あんなに大泣きするほど、惚れたヤツだ。

最低ヤロウには違いないだろうが、きっとモテる奴なんだろう。

男としては、気になるじゃないか。

別に、モテたい訳じゃない。

・・・・いや、モテるものなら、モテたいさ、そりゃ。

仕方ないだろ。

だって、俺。

年頃の、オトコノコだもの。

でも、それよりも何よりも、その最低な源氏物語ヤロウのどこに小夏が惚れたのか。

そこが一番、気になった。


「なぁ、どんな奴だったんだ?源氏物語ヤロウ。」

「なんで?」

怪訝そうな顔で、小夏が俺を見る。

「なんで、って?」

「普通、前に付き合ってた人の話しなんて、聞きたくないものじゃないの?」

思い出したくないから、話したくない。

という訳でもなさそうで。

小夏は不思議そうに俺を見ている。

確かに。

普通なら、そうだろう。

普通なら、な。

普通じゃないから、気になっているんじゃないか。

だって、なかなかいないと思うぞ?

源氏物語なんか引き合いに出して口説く男。

・・・・それで落ちる女も、そういないと思うんだけど・・・・。

確実に1人はいるからな、目の前に。

だから、参考までに。

なんて、言えるわけもなく。

「別にいいだろ、気になっただけだよ。話したくないなら・・・・」

何がおかしいのか、小夏はクスクスと笑い出す。

「気に、なっちゃったんだ?」

「悪いかよ。」

「悪くないよ。みんな、そうなんだ。あの人の事、なんか気になっちゃうんだよね、男の子も女の子も。大人も子供も。不思議な人なんだよねぇ・・・・」

そして、源氏物語ヤロウのことを、話し始めた。

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