揺れる想い②

待ち合わせたのは、小夏の家からそう遠くない、小さな公園。

小夏は、ひとりポツンと、ブランコに座っていた。

「小夏」

呼び掛けに、弾かれたように顔を上げる。

その顔は、大きなマスクで半分以上が覆われていた。

「ありがと。来てくれて。」

そう言った小夏は、泣きそうな目をしていて。

たった1週間会わなかっただけなのに、なんだかひどく小さく見えた。

「体調崩してたんだってな。大丈夫か?」

言いながら、俺も隣のブランコに腰をおろす。

「・・・・ちがうの。」

ユラユラとブランコを揺らしながら、小夏がポツリと呟く。

うん、それはなんとなく、分かってた。

心の中で答えた俺の耳に届いた、小夏の言葉。

「爽太くんに、会いたくなかったの。」


・・・・えっ?


ガツンと、頭を殴られたような衝撃だった。


やっぱり俺、気に触ることを言ったんだろうか?

なにか、嫌われるようなことを言ったんだろうか。

あああ、いったい俺は何を言ってしまったんだーっ!


と、胸の内でひとり荒れ狂っている俺に、小夏はまた、ポツリと言った。


「爽太くんに、嫌われたんじゃないかと、思って・・・・怖くて、わたし・・・・」


俺の中の嵐が、一瞬で凪いだ。

代わりに、大きなクエスチョンマークが浮かび上がる。

「なんで?」

思わずそう口にしてしまったのだったが。

「だって、わたし・・・・」

自分の体を抱きしめるような小夏の仕草に、己の失言を悔いた。

違う、責めるつもりは無いんだ。

小夏がそんな奴じゃないってことは、わかってる。

だから、俺は。

俺は。


「俺は、小夏が好きだ。」

「ありがと、爽太くん。」


そう言った小夏の声は、涙声になっていて。

暫くの間、ブランコに座ったまま、俺は押し殺した小夏の泣き声を聞いていた。

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