揺れる想い①

自由って、なんだ?

俺にはやはり、小夏の言っている意味が理解できなかった。

束縛とか、そんな事するつもりは無いけど、それとこれとは違うだろ、明らかに。

かと言って、小夏が冗談を言っているようにも見えないし、だいたい、そんな冗談を言うやつじゃない。

さらに言うなら。

ただの男好きでもビッチでも無いはずだ。

俺が惚れた、小夏という女は。


「俺、小夏が俺以外の男に触れられるのは、嫌だ。小夏は、違うのか?」


そう告げた時の小夏の顔が、忘れられない。

ポカンと口を開けたあと、大粒の涙を流して泣き出したのだ。

それも、子供のような、大号泣。

とりあえず部屋を出て、宥めながら小夏を家まで送ったのだが。

小夏は一向に泣き止まず。

道行く人にも、出迎えた小夏の親にも、俺は不審極まりない目で見られるハメになった。


小夏、なんであんなに泣いたんだろ。

俺、普通の事を言ったつもりなんだけどな。

何か、気に触るようなこと、言っただろうか?


『大丈夫か?』


そう、小夏にメッセージを送ってみたのだが。

その日、俺の送ったメッセージが既読になることはなく。

小夏からのメッセージが届くことも無かった。

そして、その後1週間。

やはり小夏からのメッセージは無く、小夏は学校にも来なかった。

人伝に聞いた話では、体調を崩しているとのことだったが、俺は半信半疑だった。

なんせ、あの大号泣を見てしまっているから。

(もしかして、俺に会いたくないから、来ないんだろうか?)

そんなことすら考え始めた俺がやっと小夏に会えたのは、小夏が大泣きした翌週の土曜日だった。


(小夏、どうしてるかな・・・・)

そう思った直後、手元のスマホから、ピコン、と、メッセージ受信音が鳴った。

慌てて画面を見ると。


【会いたい】


小夏からだった。

たったの、4文字だけの、メッセージ。

その、たったの4文字が、鬱々としていた俺の気持ちを一気に晴らした。

思わず、スマホを胸に抱きしめる。


俺も、小夏に会いたい!


続けざまにまた、ピコン、と、抱きしめたままのスマホから音が鳴る。


【会ってもらえる?】


「当たり前だろっ!」


俺はスマホの画面に向かって叫んでいた。

画面に表示されていた時間は、19時を少し過ぎたところ。

ちょっとくらいなら、今からでも会えるだろうか。

急いで小夏にメッセージを送る。


【今から会えるか?】


返信は、すぐに来た。


【うん】


その場で小躍りしたのは、言うまでもない。

親には、ちょっとコンビニ、とだけ声をかけ、小夏に待ち合わせ場所を送信しながら、俺は家を飛び出した。

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