第21話 埋葬
「うーん……そうだ、確かこういう時に使う魔法があったハズ……」
炎が消えるまでの間、ある魔法を思い出そうとしており、その魔法が使えれば喚虎を買取に出せると推測した。
するとその最中、燃え続ける喚虎にふと目を向けると、炎はかなり弱まって今にも消えそうな様子。
「ふぅ、やっと消えたか……」
自然と炎は消えたが既に喚虎は丸焦げとなっており、やはり買取は無理そうだ。
そこで、炎が消えるまでに思い出した魔法を使うことにしたのだが、それもある人物から見せてもらった魔法であり、効果のほどは定かではないので賭けにはなるが、早速唱えてみることに。
「よしっ、一か八かだ! リペア!」
丸焦げになったはずの喚虎の全身が、見る見るうちに綺麗になってゆく。
リペアは上級の修復魔法であり、治癒魔法とは別物のようだ。
「コレは……便利だな……」
リペアの凄さに驚いたすえ、思わず呟いていた。
「だけど、これで買取も可能なハズ!」そう考えながら綺麗になった喚虎を黒箱へ収納。
「次は……」
ピンクモンキー達の亡骸があるところへ向かい始めたのだが、その足取りはかなり重い。
それはまるで、向かうことに対して拒絶するかのようであった。
「それでも行かなきゃ……」
拒絶を振り切るが如く、力強く歩き向かい続けた……
「うぅ……なんて残酷なことを……」
ピンクモンキー達の亡骸があるところへ着き、そして目の当たりにする。
その無残な姿を直視した瞬間、心の中に初めての感情が生まれる。それは、悲哀感であった。
その悲哀感を抱きながら、地面に両手を突いて魔法を唱える。
「
両手の掌から前方へ広い範囲で地面が掘削されてゆく。
なお、掘削された土はとても触り心地が良く、これならきっと安らかに眠れるだろう。
俺は1匹ずつリペアを掛けてから、丁寧に、丁寧に掘削した場所へ亡骸を運んでいった。
「……!? そ、そんな……何もここまでしなくても……」
中には小さな子どもや赤ちゃんまでもが亡骸となっており、思わず目を背けてしまう。
だが再びその姿を見て確認すると、なんとも言えないほどのやるせない気持ちに……
かなりの時間を要したが、決して手を抜くことはせずに、56匹全ての亡骸を運び終えた。
地面を元に戻すため、掘削時の土に両手を突いて魔法を唱える。
「
掘削時の土が優しく亡骸達を埋めてゆき、その光景を心の中で弔いながら見つめていた。
そして、埋め終えたあとは掌を合わせて黙祷を。
(仇は取らせてもらった。だから、埋葬で我慢して欲しい……あとは、みんなが安らかに眠れるよう心より祈ってるから……)
黙祷が済み、街へ帰ることに……
「あぁ、やっぱりダメだ……」
街へ帰り始めたがすぐに足を留め、亡骸を埋葬した場所の方へ振り返る。
それは依頼の達成感よりも今の悲哀感の方が、もっとずっと重く深く心に響いているからであり、自分でもどうしていいのか分からずにした行動であった。
(ゔぅ、胸が苦しい……俺はどうすれば……)
どうしていいのか分からないまま、その場にただただ立ち尽くすのであった……
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