第22話 名前


「……ん、帰るか……」


 暫くの間、その場に立ち尽くしていた俺は、街の方へゆっくりと振り向く。

 そして、心が晴れぬまま歩き始めることに。



「……うん? 何かが来てる……? この気配は……魔物か? でも……」


 歩き始めた直後、後方より何者かが近づいてくる気配を感じ、それが魔物だとは理解したが敵意は全く感じられず、寧ろ好意的な気配を放っている気がする。


(もしかして、仲間になりたいのか?)


 なんてことを考えているうちに、その魔物はすぐ後ろまで迫っていた。

 一体、どのような魔物が俺に迫っているのだろうか? もし襲ってくるようなら、その時は……



「キッ!」


(……ん? なんか聞き覚えのある鳴き声がしたような……?)


 そう思い、咄嗟に声の方へ振り返ると、そこには唯一生き残ったあのピンクモンキーの子どもの姿が。


「キキッ!」


 ピンクーモンキーは透かさず俺の右足にしがみついてはギュッと抱き締める。

 敵意がないことは分かっていたので、特に抵抗はせずに見守ろうかと。

 すると、俺の顔を見つめながらピンクモンキーは喋り始めた。

 

「キッキキ、キキッ!」


「一緒に、行く……?」


 ピンクモンキーの言葉を理解し、そして悩み出す。


(ど、どうする? テイマーじゃない俺では……だけど……)


 悩みに悩んだすえに決断した。それは……



「よしっ、一緒に行こう!」


 このまま1匹だけで残してもきっと生き残れないと推察して、ピンクモンキーを一緒に連れていこうと決心。


「キッキーッ!」


 やったー! と言っているようだ。

 大人でも充分愛らしいのにそれが子どもとなると、愛らし過ぎて溺愛してしまうだろう。

 何せ「愛らしい魔物ランキング」で5年連続1位を獲り、見事に殿堂入りするほどなのだから。


(可愛いうえに賢いし、最高だな!)


 そんなことを思いながらピンクモンキーを右肩の上に乗せて左手で頭を撫でると、ピンクモンキーは嬉しく喜び左手に頬擦りをしてくれた。


「ははっ、本当に可愛いなぁ……よしっ、それじゃあ一緒に街へ帰ろう!」


「キキッ!」


 こうして俺は、ピンクモンキーを連れて再び街へ向け歩き始めるのであった……




「……はっ!? そうだ! 大事なことを忘れてた!」


 暫く歩いていると、不意にある問題に気づく。

 それは名前だ。ピンクモンキーの名前をまだ決めていないのである。


「なぁ、そういえば、お前の性別って?」


「キキッ!」


「メス……そうか、女の子なんだな?」


「キーッ!」


「そう! って言ったのか……分かった、教えてくれてありがとう!」


 どうやらこのピンクモンキーの子どもは女の子のようなので、是非とも可愛らしい名前を付けてあげようと思う。



「……ピンキー……ピーチ……桃……もも? ……!! そうだ! モモだ、モモにしよう!」


 ある瞬間に良さげな名前を閃き、このピンクモンキーの名前はモモに決定。

 そのことをモモに伝えると、心無しか喜んでいるように見える。


「いや〜、良さげな名前を付けてあげられて本当に良かったぁ〜」


 名前も決まりニコニコと笑みを浮かべながら、俺達は街へ向けて歩を進めるのであった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る