第19話 喚くような咆哮
「おっ、地面が見えてきた!」
毒沼地帯の最端までどうにか戻って来られたようで、ポイズントードの件もあって初めに来た時とは別の道を通ってきたのだ。
「もう少しでココから出られる……ん? この反応は……よしっ、行くか!」
安堵したその時、魔力反応を探知。
しかも最近感じたことのある反応であり、本音は今すぐにでも街へ帰りたいのだが、今回だけは話が別。
なので、反応のあった地点まで意気揚々と赴くことに。
「やった、ビンゴッ! これで2本目だ!」
反応のあった地点へ到着して、そこで予想通りのモノを見つけると、その見つけたモノを丁寧に採取して黒箱へ収納。
「他に反応は……まぁ、無いよな……」
他にも同様の反応を探したがそんな簡単には見当たるはずもなく、誠に残念だが毒沼地帯から出ることにした。
「ふぅ、やっと出られた……」
なんとか無事に毒沼地帯……いや、あのヒュドラの巣窟から生還することができたのだ。
Fランク冒険者が1人でこの依頼を達成させるという事実は最早、偉業と言わざるを得ないだろう。
その偉業を何も失わずに得られたことが事の凄さに拍車を掛けている。
考えただけでも笑みが零れ、極上の達成感を味わいながら街へ帰り始めることに。
街へ帰る近道としてピンクモンキー達のナワバリ付近を通ると、ピンクモンキーのものとは異なる魔力反応を探知した。
「……!? な、なんだ……!? 何か……何か、嫌な予感がする……」
達成感からの緩み顔は消えて、瞬時に真剣な表情へと変わる。
その予感は単なる勘ではなく「直感」と呼ばれるものであり、根拠はないが確信を持ってそこで何かが起きていると感じ取ったのだ。
そして、その直感を信じて反応を探知した地点へ早急に駆けていく。
「な、なんだよ……これ……」
そこで見たものはなんと、ピンクモンキー達による夥しい数の死骸であった。
優に50匹分はあるだろう死骸は全て、鋭い爪や牙で斬り裂かれている。
「一体、どんな魔物が……」
その魔物は既に移動している様子。
居場所を突き止めるため、魔力探知をしようとしたその時、
「ギャァァァーッ!!」
「!? この咆哮は!?」
即座にその咆哮があった方向へ振り向き、そして異様な気配を感じながらもその場所へ向かい出す。
「……!! いた! アイツの仕業か!」
ピンクモンキー達を襲ったと思われる魔物を発見。
その魔物は喚くような咆哮を上げることから「
喚虎の口周りや前脚には、ピンクモンキー達のものと思われる血が大量に付着している。
そして今まさに、最後の1匹となるピンクモンキーの子どもを手に掛けようとしているのだ。
(どっ、どうする!? 今すぐ攻撃したらあの子が……!? 一体、どうすれば……)
ピンクモンキーの子どもを巻き添えにせずに済むよう策を考え始めた……が、残された時間は短いようだ。
何故なら、その子どもに向けて喚虎が前脚を振り上げたのだから。
だがそれを見た瞬間、無意識に俺は行動を起こすのであった……
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