第89話 決着
「ぎぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
太陽のごとき煌々と輝く聖なる光が、魔王カナンの魂を焼き清めていく!
魔王カナンの魂は一瞬にして消滅した。
しかし今の俺は目の前の敵をただ倒すだけでは終わらなかった。
「まだだ、今度は逃がさねえからな?」
かつて倒したはずの魔王カナンが魂となって逃げだしたカラクリを、俺はもう既に見抜いていた。
「もう分かってるんだぜ。今倒したのは見かけだけの本体で、この亜空間こそが魔王カナンの魂の在り処だってことはな!」
魔王カナンの魔王カナンによる魔王カナンのための位相次元空間。
しかしそれは全くの逆で。
この特殊な亜空間こそが魔王カナンの魂の本体だったのだ!
だからあの時確かに討伐したはずなのに、魔王カナンは生き延びることができたのだ。
女神アテナイの究極の加護を得た俺は、それを直感的に感じ取っていた。
「や、やめろ――」
倒したはずの魔王カナンの動揺したような声が聞こえてくる。
そしてその声は答え合わせをするように、この空間全体から聞こえてきて――。
「俺とハスミンの恋路を邪魔したことを、あの世で後悔するんだな」
「ま、待て――」
「いいや待たない、次で終わりだ。リエナ、全力の防御結界でハスミンと自分の身を守ってくれ」
「はっ! あの技を使うんですね! 分かりました! いと尊き女神アテナイよ、御身を守護する破邪の聖盾を我が手に授けたまえ! 絶対防御結界『セイクリッド・イージス』!」
リエナとハスミンの周囲に白銀の強大な防御結界が形成される。
その発動を背中に感じながら、
「世界を浄化する聖光の業火よ、邪悪なる者どもを打ち滅ぼせ! 破邪顕正は我にあり! 聖光極限開放! 『セイクリッド・バーニング・バースト・ビッグバン』!!」
俺は極限まで高めた聖なる力を、聖剣『ストレルカ』でさらにブーストすると全周囲に向かって撃ち放った。
邪悪を打ち払う聖なる光が、魔王カナンの魂の本体である位相次元空間中に広がり、その全てを聖なる白銀の輝きによって焼き尽くしていく。
眩しい程の光が全て収まった時。
そこはもう位相次元空間ではなく、さっきまでいた蓮見家の玄関前だった。
「終わったな」
俺が大きく息を吐くと同時に、聖剣『ストレルカ』が光輝く粒子となってその姿を失い始める。
務めを果たした聖剣『ストレルカ』は、再び異世界『オーフェルマウス』へと帰って次なる使い手を待つ長い眠りにつくのだ。
「勇者様お見事でした」
リエナが駆け寄ってきて、
「これが勇者の力……修平くんが変わった理由だったんだね」
ハスミンが色々と納得したようにつぶやいた。
「一応お願いなんだけど、みんなには黙っていてくれよな?」
「それはもちろん。っていうか言ったとしても、わたしが頭のおかしい人扱いされるだけでしょ?」
「だよな」
「それにこの世界の人は誰も知らない、わたしと修平くんだけの秘密だもん。教えるわけなんてないし」
そう言ってハスミンは俺の胸に飛び込んでくる。
ぎゅっと抱き着くと、甘えるように俺の胸に顔をうずめる。
そんなハスミンを俺も抱き返して、
「雨降って地固まるですね」
それをリエナが少しだけ切なそうな、だけどとても満足した笑顔で見守っていた。
こうして魔王カナンの異世界同位体だったハスミンとの命がけの痴話げんかは。
俺とハスミンが『真実の愛』を確かめ合うことで、魔王カナンを完全消滅させ、無事に幕を閉じたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます