第90話 エピローグ ~帰還勇者のRe:スクール~

 翌日。


「あ、ハスミンが学校来てる!」

「おひさ~」

「心配してたんだよー」

「元気みたいで良かった~」


「えへへ、おかげさまで。みんな心配かけてごめんね」


「マジ心配したし~」

「もういいの?」

「しんどかったらすぐに言うんだよ?」


「うん、ありがとね、みんな」


「そうだ。はいこれ、休んでた間のノートだよ。数Iと数A。しかも私の特製ポイントメモ付き」

「国語は私がとってるから」

「英語は私。コミュ英と英表どっちもバッチシだから」


「ありがと! すっごく助かる!」


「いいっていいって」

「期末近いからちゃんと復習しなよー」

「そこはほら、ハスミンには学年1位の織田くんがついてるから安心でしょ」

「そうそう、織田くんがすごく心配してたよ」


「うん、知ってる」


「うわっ、この反応!?」

「そっかぁ、織田くんがハスミン心配してるのは知ってたかぁ」

「だよね~知ってるよね~」


「う、うん」


「熱いね~」

「いやーん、ラブだ~」

「ハスミン顔真っ赤~」

「すきぴ?」

「もうえっちはした?」

「できちゃうからちゃんとゴムはつけなよ~」


「そんなハレンチなことしてないから!」


「じゃあどこまでいったの~?」

「そうそうどこまでいったの?」


「それは、その、き、キスとか……」


「わーお!」

「ハスミンも大人になったねぇ」

「どんなキス? 大人のキス?」


「それはえっと、優しい感じで……」


 ハスミンが学校について早々、仲のいい女子たちに取り囲まれていた。

 最初こそ心配していた女子たちも、ハスミンがすっかり元気だとわかった途端にからかって遊ぶことに切り替えたようだ。


(女子ってほんと他人の恋愛話が好きだよなぁ……)


 しかもハスミンは女子の輪の中で四方八方から質問攻めをされて、自分の席にたどり着けないまま顔を真っ赤にして要らないことまでしゃべっちゃってるし。


「いいのアレ? あの子あのままなんでもかんでもしゃべりそうよ?」


 そんなこと考えながら、クラスメイトに囲まれてあたふたしているハスミンを眺めていた俺に、新田さんが話しかけてくら。


 新田さんには今日からハスミンが来ることは前もって伝えてあった。

 当然、付き合うことになったこともだ。


 昨日の夜、俺とハスミンと新田さんでグループラインを作ってあれこれ2人で説明したのだ。


 もちろん異世界云々のことは言っていないけれど。


「別になにかやましいことをしたわけじゃないからな。それにみんなハスミンのこと気にかけてたし、復帰祝いで盛り上がるのは仕方ないかなって」


 キスしたくらいは高校生なら普通の範囲だろう。


「付き合って早々彼女思いで結構なことね。ま、織田くんがいいならいいけどね。愛されてるあの子が羨ましいわ」


 なんてことを話していると、ハスミンが女子グループから逃げるようにしてやってきた。


「うう~大変だったぁ……」


「朝からお疲れさん。さすがハスミン、人気者はつらいな」


 夏休み明けに当然のように名前を忘れられていた俺とは大違いだ――などとはもちろん言いはしない。

 彼女になった女の子に、そんな嫌味を言う奴は彼氏として以前に人として終わってる。


「人気者っていうか、明らかにみんなでわたしのことをオモチャにして遊んでたんだけど……」


「困ってあたふたしてるハスミンは可愛かったぞ?」


「また平気な顔してそんなこと言うし……修平くんのばーか。でも好き……」


 ちょっと俯きながら上目づかいで見つめてくるハスミン。

 ――と、


「はいはい、朝からお熱いのは結構だけど、すぐ隣に私もいるってことを忘れないでね?」

 新田さんが呆れたようにつぶやいた。


「め、メイ……これはその……あれで……ね?」


「ごめんね、2人の世界にお邪魔虫しちゃって。すぐに自分の席に戻るわね」


「や、やだなぁもう、久しぶりなんだからもっと話そうよ? そうだよね修平くん?」


「そうだな、こうやって3人で話すのは久しぶりだしな」


「そう? 2人がいいのならいいんだけど」


「ぜんぜんオッケーだし! ね、修平くん」

「もちろんだとも」



 こうして。

 異世界『オーフェルマウス』を救い元の世界に帰還した勇者こと俺――織田修平の平和な学園生活が再びリスタートしたのだった。



(終わり)


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あとこの後、少しだけ追加エピソードがあります。

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