第74話 魔王カナン、討伐の決意。
「いえ、それがあまり上手くいってないんです。こっちの世界では女神アテナイの神託をイマイチ上手く受けられなくて、大まかにこの辺りにいるとしか分からないんです」
「そうなのか。でもこの辺りにいるのは間違いないんだよな?」
「実際に魔獣キングウルフが出現していますからね。魔王カナンの闇の力の影響を受けて魔獣が生まれ落ちたと考えれば、魔王カナンがこの近辺にいるのはほぼ間違いないと思います」
「なるほどな、納得の推理だ」
おそらくその辺の野良犬が魔王カナンの強大な闇の力を受けて闇落ちし、キングウルフへと魔性進化したんだろう。
「ですが先に勇者様と会えたことは僥倖でした。私一人ではとても魔王カナンとは戦えませんから」
「そこは任せてくれ。奴にこの世界で好き勝手はさせない。ここは俺の世界だからな。どこに隠れ潜んでやがるのかは知らないが、見つけ出して今度こそ完膚なきまでに消し去ってやる」
「微力ながら私も協力させていただきます」
「頼りにしてるぞリエナ。捜索に関しては俺は素人で、完全にリエナ頼りだからな」
「はい。構築中の高精度の探知術式をなるべく早く完成させますので」
「当面はそれの完成待ちってことか。ってことで作戦会議は終了だな。よし、せっかく再会したんだ、いっちょ景気づけに飯でも食いに行こうぜ。ラーメンとかどうだ?」
「ラーメンですか!? 勇者様が言っていたこの世界のソウルフードですよね!? ぜひ食べさせてください!」
「近くに美味しいお店があるからそこに行こう――っと悪い、あれ? ハスミンからラインだ。ちょっと待っててくれ」
リエナに断ってスマホを見る。
そこにはハスミンからのラインがあった。
『用事は間に合った? ご両親と待ち合わせとか?』
(あー、そうだよな。かなり強引に別れたから気になってるよな。でもうーん、リエナや魔王カナン復活のことは言えないもんな……仕方ない、親と会ってることにしておこう)
『そうだよ、親と会ってた』
リエナと会って魔王退治の作戦を立てていた――なんて本当のことを書くわけにもいかなかった俺は、無難に親と会っていることにした。
ハスミンに嘘はつきたくないけど、こればっかりは本当のことは言えないのでしょうがない。
――と、
「勇者様、その小さな板はなんですか?」
リエナが横から興味深そうに俺の手元を覗き込んでくる。
「ああこれか? これはスマホって言って、同じものを持ってる相手となら、どれだけ離れていてもいつでも連絡を取れるアイテムなんだ」
「そ、そんなものまであるだなんて! もしかしてここは神々の住まいし天界なのでしょうか?」
俺の説明に、リエナが驚きで大きく目を見開く。
「俺からしたらこっちの方が当たり前で、むしろ『オーフェルマウス』みたいに女神の加護やスキルが当たり前にあるほうが不思議なんだけどな」
「そんなことありませんよ、絶対にこっちの方が不思議ですよ!」
「まぁこれもある意味、隣の芝生は青いって奴なのかな……?」
とまぁそんな感じで。
俺はリエナと今後の大まかな方針を決めると、魔王カナン討伐の英気を養うこともかねてラーメンを食べに行った。
初ラーメンを食べたリエナは俺の予想以上に感激してくれて、俺も案内した甲斐があったというものだった。
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