第49話 帰還勇者の恋愛事情

「またまた、あんな仲いいくせによく言うぜ。そもそも男子で蓮見さんをハスミンって呼んでるのは修平だけだぞ? しかも蓮見さんからも『修平くん♡』とか名前呼びされてるし。なんだそれ羨ましすぎだろ」


「ほんとだってば。ハスミンとは何もないよ。まだ全然ただの友達だ」


「まだ、ねぇ?」

「……今のはちょっとした言葉の綾だ」


「はいはい、今はそう言うことにしておくな。なんせ夏休みに一念発起して陰キャ卒業しちゃうくらいにお年頃だもんな」


「いやほんとにほんと、何もないんだぞ? そりゃハスミンのことをいい子だなとは思ってはいるけど、そういう関係には全然至ってないから」


「はぁ、さよですか」


 異世界『オーフェルマウス』で5年勇者をやって、何事にも動じない鋼メンタルや魔王を倒すほどの戦闘能力などなど、俺は心身ともに大いに成長した。

 しかしその中で唯一成長しなかったのが、恋愛に関する能力だった。


(なにせ向こうの世界は常に命をかけないといけない常在戦場で、恋愛なんてしてる暇はなかったからな)


 つまり俺の恋愛スキルは陰キャ時代と変わっていない――どころか5年の過酷な戦闘体験を経てさらに劣化しているまであった。


 でもこればっかりは、経験を積まないとどうしようもないと思うんだよな。

 かと言って経験を積むために適当に誰かと付き合うってのは、どう考えても本末転倒だし。


 付き合うなら真剣に交際したい。

 そして真剣に交際するなら――ハスミンがいい。


「智哉だからぶっちゃけるんだけど、まだ好きだと意識し始めたばかりで全然そんな付き合うとかいう段階じゃないんだよ。なによりこればっかりは、お互いの気持ちが一致しないといけないわけだろ?」


「あのな、さらっと意識し始めたばかりとか、いい子だなと思ってるとか言えちゃうのが既にすげーんだよ。そんなの俺には死んでも無理だから」


「そう……だな」


 智哉の言うとおりだ。

 昔の陰キャな俺だったら、他人にこんなことは絶対に言えなかっただろう。


「だいたい蓮見さんだってどう見てもお前に好意持ってるだろ?」

「いやそれはどうだろう? まだ何とも言えないんじゃないか?」


「いやいや絶対そうだって」

「一応聞くけど、智哉がそう思う根拠はあるのか?」


「深夜のラブコメアニメが大好きなラブコメマイスターの俺が言うんだから間違いない」

「ありがとう、全く信用できない意見だってのがよく分かったよ」


「くふふ、だよなぁ。俺も言ってて思ったもん。自分で言っといてなんだけどさ、リアル恋愛の参考事例が深夜アニメはないよな」


「山登りするのに浮き輪を持っていくようなもんだな」


「お、上手いこと言ったじゃん。あー、俺も修平みたいに誰かをいい子だなとか言えるような関係になってみたいなぁ……」


 廊下の天井を見上げながらぼやくように言った智哉に、


「智哉だって少しずつ前に進んでると思うぞ。文化祭だってすごく頑張ってたじゃないか。俺たちまだ高一なんだしさ、焦る必要はないんじゃないか?」


 俺は智哉に昔の自分を重ねながら、心からの言葉をかけた。



 こうして俺の高校生活は、再び平和に進み始めたのだった。



―――――


 第3章では異世界から帰還後は平和な学園生活を送っていた修平が、初めて強い怒りを見せるお話でした。

 そして圧倒的なまでの勇者の力による正義の鉄槌!

 いわゆる「ざまぁ」ですね!


 国会の証人喚問を利用したざまぁは結構新鮮なんじゃないかと思います(*'▽')パアッ


 気に入っていただけましたら、フォローと☆(評価)をしていただけると嬉しいです。

 ☆は3回まで押せますよ~(>_<)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る