第40話 中間テストとかいう空気読まない存在(2)
「まぁな。今回はかなりできた手ごたえがあるんだ」
「うわぁ、マジで余裕ムーブだし!? 普通そこは『そんなことないぞ、俺も結構不安だ』とか謙遜して言うとこでしょ!? それがテスト前の学生あるあるでしょ!
?」
「それで高得点だったら相当感じ悪いだろ?」
ぶっちゃけ全教科100点が取れそうな勢いなのに、謙遜した振りをしてそんなことを言うのはさすがにどうかと思う、人として。
「あはは、それは確かにね。帰りについ呪いの藁人形とか買っちゃいそう」
「おいおい、呪いの藁人形ってそんなのどこで売ってるんだよ」
「んー、どこだろ。東急ハンズとか?」
「確かにハンズにならあるかもな。あそこなんでもあるもんな。藁人形くらいあっても全然おかしくはない」
普通のお店ではまずお目にかかれない様々なニッチなアイテムが、フロアごとに所狭しと並べられた東急ハンズの独特の売り場を、俺は頭に思い浮かべた。
「ネットになくてもハンズにはある。ハンズになければ諦めもつく。困ったらとりあえずハンズ行っとけ、みたいな?」
「ほんとそれな」
ネットですら取り寄せに2週間かかる商品が、当たり前のように店頭に置いてある。
それがハンズ・クオリティなのだ。
「あー、でもそんなに余裕なのかぁ。そうだよね、修平くんは普段の授業からすごかったもんね。うー、羨ましい……」
「ま、まぁな」
「でもでも、1学期はそうでもなかったよね? なにかいい勉強法でもあったの? うりうり、隠してないでこっそりわたしに教えてよ?」
「えーっと……特にこれってのはないんだよな。だからやっぱりやる気が大事じゃない……かな?」
(勉強に関しては完全に女神アテナイのチートスキルのおかげなので、勉強法を教えてと言われると正直すごく困るな。答えようがないからこうやって誤魔化すしかない)
「やる気かぁ。やっぱり最後は本人の意識が大事だよねぇ。気持ち、やる気、モチベーション! だがしかし、わたしには勉強に対するそんな熱い想いはないのだった。はぁ……」
中学生と違ってそれなりの自由を得て活動範囲も広がり、お小遣いも増え、なにより遊びたい盛りの高校生だ。
だっていうのにわざわざ勉強が好きだと言う高校生を探すのは、飴を持ってない大阪のおばちゃんを探すくらいに大変なことだろう。
「悪いな、こんな答えしかできなくて」
「? なんで修平くんが謝るの?」
「な、なんとなくな」
女神アテナイの加護のおかげで勉強が楽勝すぎて心苦しいからとは、さすがに言えない。
「あはは、変な修平くん。でもその感じだと学年トップ20とかに入ってるかもね? 週末に20位までが張り出されるから、そこに修平くんの名前があったらお祝いしてね」
「おいおい、俺がお祝いしてもらうんじゃなくて、俺がハスミンをお祝いするのかよ?」
「トップ20にも入って、さらにお祝いまでして欲しいとか舐めんな修平!」
ハスミンが冗談っぽく笑いながら、俺を指差しながら呼び捨てにしたんだけど――。
(か、可愛い……)
女の子に初めて名前を呼び捨てで呼んでもらった俺は、ドキッと胸を大きく高鳴らせてしまっていた。
そして。
文化祭の前後からハスミンのことをなんとなく意識するようになった気がしていた俺は。
今のやり取りで改めて自分の気持ちに気が付いたのだった。
(そうか、俺はハスミンのことを好きになっていたんだ)
そうか、そうだったのか。
俺はハスミンに恋をしていたのか――
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