第11話~蓮見佳奈SIDE~
~蓮見佳奈SIDE~
わたし――蓮見佳奈は自分の部屋のベッドの上で、枕を抱きかかえながら体育座りをしていた。
もうお風呂は済んで、髪も乾かし終わって、パジャマに着替えて。
膝に置いた枕に顔をうずめながら、わたしは今日の帰り道でのことを思い返していた。
『蓮見さん、どうしたの? なにか揉めごと?』
金髪の不良たちにしつこくナンパされて絡まれていた時、さっそうと現れて助けてくれた隣の席の男の子――織田修平くん。
周りの人がみんな見て見ぬふりをして足早に通り過ぎていく中、彼だけは――修平くんだけは当たり前のようにわたしを助けに来てくれたのだ。
修平くんは金髪の不良とケンカ腰でやり合っている時は少しだけ怖かったけど、その後はすごく優しい笑顔で話しかけてくれた。
「なんだか前までとは全然印象が違うっていうか、前の修平くんはどんな男子だったか正直あんまり記憶にないんだけど……でも本人は夏休みに一念発起したって言ってたっけ? すごくハキハキしゃべるようになってたし、みんなが嫌がるクラス委員にも立候補してたし。ほんと1か月で男の子ってこんなに変わるんだ……」
男子三日会わざれば刮目して見よ。
大好きな三国志の有名なセリフをふと思い出す。
同時に「なんかいいな」という、なんともむず痒い感情が自分の中にあることに、わたしは気が付いてしまっていた。
ラインの交換もしたし、話の流れでハスミン・修平くんと呼び合うことにもなった。
「しかも『佳奈ね、素敵な名前だね』とかさらっと言われちゃったし。言われちゃったし。言われちゃったし!」
(素敵な名前だって。ふふっ、素敵な名前なんだって……)
「修平くん……」
その名前を呼ぶだけで、なんだかどうしようもなく嬉しくなっている自分がいて――。
「そうだ、ラインしてみようかな? 助けてもらったんだから、もう一回くらいお礼を言っておいた方がいいかもだし。うん、お礼するのは変じゃないよね」
ベッドの脇に置いていたスマホを取ろうとして――。
でも『俺と連絡先交換しても連絡することはないんじゃないかな?』と言われてしまったのを思い出す。
あの反応は「俺たちは連絡するような仲じゃないだろ」って言外に言っていた気がしなくもなかった。
「うーん、よく考えたらわたしたちって、もう2学期なのに実質今日初めて話しただけの関係なんだよね。なのに夜に連絡したらウザいって思われちゃう可能性が高いかぁ」
事実、今の今まで修平くんからも連絡はないし。
つまり修平くんにとって、わたしは特に大した存在ではないのだ。
たまたま通りかかったから助けただけ。
「うん、そうだよね。そういうのはもうちょっと仲良くなってからにしよっと」
そう結論付けるとわたしはベッドに身体を投げ出した。
うーんと伸びをする。
「アレクサ、電気消して」
部屋の電気を消すとすぐに心地よい睡魔が襲ってきて――。
修平くんの笑顔を瞼の裏に思い浮かべながら、わたしはぽかぽかとした気持ちのまますぐに寝入ってしまったのだった。
―――――
『帰還勇者のRe:スクール(学園無双)』 をお読みいただきありがとうございます(ぺこり
やや展開が遅くなりましたがハスミンと無事に仲良くなりました。
ここから本格的に学園ラブコメがスタートです!
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なにとぞ~(>_<)
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