第12話 英語の授業で無双する。
9月2日、俺の5年ぶりのお勉強生活が始まった。
しかし女神アテナイの加護を受けている俺にとって、高校の授業はベリーイージーだ。
例えば英語の授業。
「じゃあこの部分の日本語訳と、この英文を通して作者が言いたい要点を……織田」
俺はシャキッと起立すると訳を読み上げる。
「はい! 訳は『もし誰かが世界最強のディープブルーにチェスで勝てるとしたら、それはこっそりコンセントを抜いた時だろう』です」
「ふむ、正解だ」
「そしてこの英文全体で作者が言いたいことは『人間がまともに勝負しても相手にならないほどに、コンピュータの性能は今やめざましく進化している』ということです。ちなみにディープブルーは当時の最先端スーパーコンピュータの名前です」
「よく調べてあるな、訳も意味も完璧だ」
「ありがとうございます」
俺が着席すると隣の席のハスミンが「すごっ!?」って顔で見つめてくる。
ちなみに俺は英語が得意というわけではない。
むしろ英語は最も苦手な教科の一つ『だった』。
しかし今の俺には女神アテナイの加護があるのだ。
女神アテナイは異世界『オーフェルマウス』の総合神となる前は、元々は愛と知の女神だったらしい。
だからその加護を受けた俺は、英語を日本語と同じ感覚で扱うことができるのだ。
本来これは異世界『オーフェルマウス』に異世界転移した時に、言葉の齟齬を無くすために与えられた常時発動スキルだった。
最初っから常に発動しっぱなしのためスキルの名称すらない。
いやもしかしたら名前くらいはあるのかもしれないけど、少なくとも俺は知らなかった。
そのスキルが俺が異世界から帰還したことで現代に逆輸入されて、どんな言語も理解できるスーパーチートになってしまったというわけだ。
しかも単純に言葉の意味を理解できるようになるだけじゃない。
言葉や数式への理解力が格段に向上しているため、数学なんかも教科書をペラペラとめくって軽く眺めただけで、すべて完璧に頭に入ってくるのだ。
昨日の夜、予習をしようと思ってびっくりした。
5年ぶりにやったはずなのに、高校の英語や数学が小学校の算数よりも簡単に理解できてしまったから。
(このチートスキルは学歴社会で生きる学生にとって最強チートだよな。常時発動してて俺の意思じゃオンオフできないから、ズルしてるって感覚もあんまりないし)
これはもう俺に与えられた才能として、ありがたく使わせてもらおう。
ほんと、これさえあれば東大や京大だっていくらでも入れるんじゃないか?
別に東大や京大に特段行きたいわけではないんだけど。
「修平くんって頭いいんだね」
そんな俺にハスミンが視線は前に向けたまま、教科書で口元を隠して小声でこっそり言ってくる。
「まぁ割とな」
俺も同じように口元を隠しながら答えた。
チートのおかげとはいえ、可愛い女の子に褒められて悪い気はしない。
「いいなぁ、頭良くて」
「そう言うハスミンも勉強は得意だろ?」
確か1学期の期末で、毎回張り出される成績上位者一覧に蓮見佳奈という名前があったはず。
俺の中ではもう5年前だからかなりあやふやだったけど、美人で人気者なのに勉強までできるなんてすごい人だなぁと思ったような記憶があった。
「わたしはどっちかって言うとガリ勉タイプだから、実はついてくので精いっぱいなんだよね。でもいい大学に行って公務員になりたいから、勉強はしないとだし」
「そうなんだな」
(一生懸命勉強して成績を上げてる人を見ると、チートのおかげで勉強がめちゃくちゃ簡単でラッキーとか思ってた自分が、ちょっと申し訳なくなるかも)
でもま、このスキルに関しては俺の意思でどうにかなるもんでもないし、異世界を救った勇者なんだからこれくらいの特典はあってもいいと思うことにしよう。
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