第13話 体育の授業で無双する。(1)

 そして英語なんて目じゃないくらいに、元勇者の俺がぶっちぎりで無双したのが体育の授業だった。


 2学期前半の体育のカリキュラムは、主に体育館でのバスケットボールだ。

 今日はコートを2面取って、片方は男子、もう片方では女子の試合形式の授業が行われていた。


 3チームずつ作って、ローテーションで2チームが対戦、1チームが休憩がてら審判をする。


 そしてうちのクラスにはバスケ部で1年生の夏からレギュラーを獲った、爽やかイケメンの伊達くんがいた。

 そんなわけで俺のチームメンバーは端から勝つのを諦めていたんだけど、俺だけは違った。


(戦闘用の勇者スキルはいっさい使わず、純粋な身体能力だけで勝負する――!)


 というか俺の身体能力を大きく強化する『女神の祝福ゴッデス・ブレス』なんかを使った日には、20メートルとか軽く跳んじゃうからな。

 さすがにまずい。


 俺は伊達くんとマン・ツー・マンでマッチアップすると、この5年で鍛え上げた身体能力をいかんなく発揮して勝負を挑んだ。


 実戦で鍛え上げた超絶反射神経でドリブルを簡単に止めると、抜群の跳躍力でシュートをブロックする。


 駆け引きを読み切ってパスカットしてターンオーバーすると、一気にドリブルで敵陣に持ち込み、


「おおぉぉ──っ!」


 フリースローラインから大跳躍のエアウォークで中空を駆けると、そのまま豪快なダンクを叩き込んだ!


 とまぁそんな具合で、試合は俺の大活躍によって下馬評を覆した俺たちチームの圧勝に終わった。

 試合後、伊達くんがぽかーんと口を開けて俺を見つめていた。



「ねぇねぇ、伊達くんて1年でバスケ部のレギュラーになったんでしょ? その伊達くんに勝っちゃう織田くんってマジすごくない!?」

「ヤバみ~」


「うんうん! 織田くんが運動神経こんなに良かったって知らなかったし!」


「しかも私気付いたんだけど、織田くんってかなり細マッチョだよね?」

「2学期に入ってから明るくて爽やかだし」


「あれ? 織田くんって結構良くない?」

「だよねー」


「ねぇねぇハスミン。ハスミンって席となりだしクラス委員と副クラス委員だし、最近織田くんとよく話してるよね? 織田くんがどんな人か教えてよ?」


「えっ!? わ、わたし!?」

「なにその反応? なんでキョドってるの?」


「べ、別になんでもないし? だいたいわたしだって修平くんとそこまで仲いいわけじゃないから。ただの友達だもん」


「修平くん?」

「え、あ、う、うん……」


「ねぇねぇみんな聞いた!? 修平くんだって!」

「おいおいハスミンさんや、名前で呼ぶとかちょお仲いいんじゃないですかな?」


「あれ、なんかハスミン顔赤くない? え、もしかしてハスミンって――」


「ち、違うし! わたしが修平くんを好きとか勝手なこと言わないでよね」


「あれれ~? おかしいなぁ~? 私まだ何にも言ってないんですけどぉ?」

「ハスミンってマジすきぴ的な?」


「~~~~~っ!!」



「こら女子! 織田がすごいからって、男子の方ばっかり見てるんじゃない! 今は授業中だ、ちゃんとそっちも試合をしろ! 減点するぞ!」


「「「「はーい、すみませんでした~!」」」」


 自分たちの試合そっちのけで男子の試合を観戦して盛り上がっていた女子たちが、体育の先生に怒られて再び試合を再開する。


 そして体育の先生は女子を静かにさせると、休憩がてら審判をしていた俺のところまでやってきた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る