得意の技能(スキル)が死んだ俺は、所属の組織(パーティー)から追い出されたが、代わりの最強技能(スーパースキル)が目覚めたので、新しい冒険生活(ライフ)を送る事にした
嬢23話 一難去って、また一難(※一人称)
嬢23話 一難去って、また一難(※一人称)
そんな気持ちを抱いた私ですが、彼等の方は「それ」を待ってくれません。私が「寄り道」の言葉に戸惑っている間も、一人、また一人と、その言葉にうなずく人が現れました。「こんなんじゃつまらない、もっと戦いたい」と言う風に。例のゴンバ君を中心にして、その意識が次々と集まりはじめたのです。彼等は古の豪傑達と同じく、戦いの中に生き、戦いの中で死ぬ、そんな精神の人達でした。それゆえに少々危ないところもありましたけど。
彼等は私の存在などすっかり忘れて、互いに「次は、どこに行くか?」と話しはじめました。「町の外を探していても、仕方ない。アイツ等は、町の中に集まるからな。色んな理由を考えても、そこに行った方が絶対」
私は、その言葉に慌てました。その言葉を「はい」と受けいれるわけにはいきません。私の夢と照らしあわせても、それを叶えるわけにはいかなかったのです。私は彼の怒声に怯える一方で、彼には「それ」をきちんと伝えました。「駄目です! そんな寄り道なんて、許しません。私の敵を倒すためにも、そんな理由を認めるわけには」
ゴンバ君は、その言葉を遮りました。それも、「ああん?」の威嚇付きで。彼は私の胸倉を掴むと、周りの制止を無視して、その目を「なんだと?」と怒らせました。「お前、俺様に意見するつもりか? 俺様が『そうしたい』と言っているのに? それを」
拒もうなんて。そう言いかけた彼の言葉を遮ったのは、その側近らしいボーノ君でした。ボーノ君は(一応)好戦組の中に入っていますが、その中では比較的に頭脳派であるらしく、ゴンバ君と同じような体型ではあるものの、彼の腕を掴む手付き、彼に「お前の気持ちも分かるが。ここは一旦、落ちつくべぇ?」と呼びかける態度からは、一種の知性が感じられました。また私の方に振りかえった時も、私に「ごめんな、ねえちゃん」と微笑んでくれた。彼はゴンバ君の手を放して、その顔をじっと見ました。
「ゴーやんの気持ちは、よく分かる。俺も正直、ゴーやんと同じ気持ちだからね。暴れられるなら暴れたい。でも、今はダメや。俺達の目的を考えても、その気持ちは抑えておいた方がええ。今回逃がした連中も、ほら? 周りに俺等の事を言いふらすとも限らんし。目立った行動は、厳禁や。お前は、忘れているかも知れんけど。これ一応、隠密行動だしね? 町への奇襲ができてなんぼ、その敵を討ち取ってなんぼなんだ」
「そ、そりゃ、そうかも知れないが。でも!」
ボーノ君は、その言葉に溜め息をつきました。その言葉にただ、「やれやれ」と言うように。彼は呆れ顔で、ゴンバ君の顔を睨みました。「じゃなぁい。おねえちゃん、困っているでしょう? 残りの連中も、ほら? ねえちゃんと同じ顔をしているし。みんな、乗り気じゃないんだわ」
ゴルバ君は、その言葉にうなだれました。本当は「なに?」と言いかえしたいようでしたが、その言葉に「うっ」と丸めこまれたようです。相手の顔を「チッ」と睨みかえす顔からも、その感情がしっかりと感じられました。ゴルバ君は地面の上に目を落として、その上に置いている石ころを拾いました。「わーたよ。お前がそこまで言うなら、今回は諦める。余計な町を襲うのはさ? 最初の予定どおり」
ボーノ君は、その言葉に微笑みました。それを心から喜ぶように。彼は嬉しそうな顔で、私の顔に視線を戻しました。
「そんなわけだから、おねえちゃん」
「は、はい!」
「今までの話は、なし。俺達は、最初の目的どおりに進むよ? おねえちゃんの復讐を果たすためにもね? 楽しい、楽しい、冒険をつづけよう」
ボーノ君は「ニコッ」と笑って、私に「ね?」とウインクしました。それが、とても素敵だった。「俺も、その方が楽しいし? おねえちゃんも」
私は、その言葉にうなずきました。言葉の裏に潜む、彼の優しさを感じて。その言葉に思わず、「はい!」と応えてしまったのです。私は「ニコッ」と笑って、自分の周りを見わたしました。私の周りでは、その仲間達が笑顔を浮かべています。例の好戦組は不服な感じでしたが、それら以外は満面の笑みを浮かべていました。私は彼等の笑みにうなずいて、ボーノ君の顔にまた視線を戻しました。「楽しいです、冒険の途中で敵と出会うのは仕方ないですが。それを除けば、確かに!」
ボーノ君は、その言葉に微笑みました。それが彼の、「自分の意思だ」と言わんばかりに。その喜びを表してくれたのです。彼は嬉しそうな顔で、ハルバージ君の顔に目をやりました。「ハルバージも、それでいいやろ?」
その返事はもちろん、「ああ」です。ハルバージ君は自分の周りを見わたして、その全員に「行こうか?」と促しました。「ここに留まる理由もないしね? 別にもめる必要もない。俺達は俺達の目的、ヴァインの目的を果たせればいいんだ」
そう笑った彼の顔は、太陽のように輝いていました。ハルバージ君は私と並んで、今の場所からまた歩きだしましたが……物事はやはり、そう上手くはいきません。自分達がどんなに頑張っても、そこから逃げられない事もあるのです。私達は様々な要因が重なったせいで、これから要塞落としに行こうとしている軍団、その冒険者達と鉢合わせになってしまいました。
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