得意の技能(スキル)が死んだ俺は、所属の組織(パーティー)から追い出されたが、代わりの最強技能(スーパースキル)が目覚めたので、新しい冒険生活(ライフ)を送る事にした
第73話 悪魔の気配、燃えあがる闘志 2
第73話 悪魔の気配、燃えあがる闘志 2
「どうしたんですか?」
無視、ではなかったようだ。俺が突然に話しかけてきたので、それに「え?」と固まってしまったらしい。最初は少女達の事を睨んでいた冒険者達も、少女達と同じような反応を見せていた。彼等は目の前の俺、魔術師姿の俺をじっと睨みはじめた。
「こんなところで?」
「何でもない」
わけがないだろう。これはどう見ても、この少女達に絡んでいる。少女達の周りを取り囲んでさ、自分達の前から逃げられないようにしているのだ。彼等の頭らしき男も、不機嫌な顔で周りの連中に命じている。彼等は少女達に何かしらのいちゃもんをつけて、その金品(あるいは、身体?)を巻きあげようとしていた。
「魔術師だか何だか知らねぇが、よそ者がしゃしゃりでてくるんじゃねぇ」
その言葉にカチンときた。俺は、確かによそ者だ。彼等の言う通り、まったく関わりない部外者である。俺がどんなに「違う」と言っても、それは変えようのない事実だった。
「それでも」
やっぱり許せない気持ちは、ある。「助けてあげたい」と言う気持ちは、ある。少女達は「それ」に戸惑っているようだが、自分の正義感( らしきモノ)が燃えていた俺にとっては、そんな事など別にどうでもいい事だった。自分の目の前にもし、「助けたい」と思う人が現れたら。それをただ、自分の思うままに助けるだけである。俺は背中の杖を抜いて、冒険者達の前に「それ」を向けた。
「質問」
「ああん?」
「
その答えは、沈黙。少女達の目を潤ませ、冒険者達の目を血走らせる沈黙だった。沈黙はしばらくつづいたが、頭と思わしき男がそれに耐えられなくなったようで、その静寂をすっかり切りさいてしまった。男は、仲間達の制止を振りきった。
「別にどっちだっていいだろう?」
「なに?」
「
俺は、その言葉に目を見開いた。そんな自分勝手な理屈、どう考えても許せない。
「ふざけ」
「ないで!」
な、なんだ? 俺の声に重なって、クリナの怒声が飛んできたぞ?
「そんな勝手な理屈」
君も、同じ事を思っていたのね。残りの少女達も、彼女と同じ顔を浮かべている。これはみなさん、相当に怒っているようだった。
「許されるわけがないでしょう? 自分達よりもずっと年下な、こんな少女達からお金を奪おうとするなんて!」
クリナは腰の鞘から剣を抜いて、冒険者達の前にそれを向けた。これは、斬る気まんまんですね。マドカさんも、「オレもやるよ」って顔をしている。
「盗ったの?」
「ああん?」
「この子達のお金」
冒険者達は、その言葉に吹きだした。その言葉のどこが面白いのだろう? 例の男は、楽しそうに「ニタニタ」と笑っている。
「これから盗るんだよ」
その言葉につづく、別の冒険者。
「お前等の金も含めてね?」
冒険達はまた、さっきと同じように笑いだした。ちくしょう、本当に嫌な連中だ。彼等の声を聞くだけで、イライラしてしまう。俺達の事を見くだしているようで、頭の血が今にも噴きだしそうだった。
「財布」
「は?」
「じゃ、ねぇよ。言葉が通じねぇのか? ……そうかい。なら、身体で分からせてやるよ!」
そう言って放たれた拳は、クリナの剣に防がれてしまった。クリナは俺の顔にそれが当たりかけた瞬間、剣の側面を上手く使って、その攻撃を見事に弾いてしまったのである。
「なっ!」
「そんな拳じゃ、誰も殴れないわよ?」
おっしゃる通り。だが、それが冒険者達に火を点けたようだ。冒険者達は腰の剣を次々と抜いて、クリナの身体に斬りかかろうとした。だが、そんな攻撃など通るわけがない。シオンやマドカの援護もあったが、クリナ自身も目の前の敵を制したし、これまで黙っていた三人娘の一人、見るからに格闘家らしい少女も、相手の後頭部に回し蹴りを入れて、その戦力を見事に削ってしまった。
「ふんっ!」
少女達は、互いの背中をつけあった。君達、初対面だよね? 初対面なのに息ぴったりじゃない?
「やるわね?」
「そっちこそ、いいうでしている」
挙げ句の果てには、お互いの腕を褒めあっている始末。剣と拳は、やっぱり相性いいのか?
「でも」
「ええ、もちろん。これで、お仕舞いじゃないわ?」
クリナは、俺の顔に視線を移した。たぶん、「そうでしょう?」と言う事だろう。「最後のとどめは、俺」と言う感じに。
「このおバカな連中をお仕置きしちゃいなさい」
「言われなくても」
最初から、そのつもりだ。こんな奴等に情けなんていらない。
「地道に働け!」
俺は、目の前の冒険者達に魔法を放った。彼等の身体を吹きとばす、少し軽い魔法を。その呪文をすっ飛ばして、彼等の身体に叩きつけた。
「てりゃ!」
冒険者達は、その言葉を聞かなかった。俺が杖の先から魔法を放った瞬間、その身体を吹きとばされたからだ。彼等は建物の外壁に身体を叩きつけられ、その意識をすっかり失ってしまった。「う、ううう」
俺は、その声に溜め息をついた。その声に呆れたわけではない。彼等の実力にガッカリしたわけでもない。他人の金を奪おうとする奴等は、大抵がこんな奴等しかいないからだ。他人よりも少し強いだけの力を使って、その欲望を満たそうとする。その根性に思わずイライラしてしまったのだ。
「お前等もいっぱしの冒険者なら、もっとまっとうに生きろよ」
俺は自分の頭を掻いたが、例の格闘家さんが俺に「ありがとう」と話しかけてきたので、その顔に視線を思わず移してしまった。
「別にお礼なんていいよ。それより大丈夫? どこかケガしていない?」
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