第5話 どこの世界も友人は情報通
「――――よぉ~遅刻君! 初日から盛大に目立ったな? やるじゃないか」
「……なんだ
「いや、ガチの舌打ちは止めて。流石に傷つくぞ?」
始業式に途中参加し、それなりに注目を集めてしまったチッコク三人組。
バツの悪い顔をしながら、いそいそとC組の端に並び式をやり過ごした。
式が終わり、知り合いに
まさか、コイツが俺のヒロインじゃねぇよな? やめてくれよ。
高身長ではあるがフツメン。フツメン!! ここ最重要。ちなみに当たり前だが彼女はいない、コイツと居ると安心する。
「しっかし髪、切ったんだな? 寝癖が酷いけど」
「時間がなくて整えられなかったんだよ」
「どうせ遅刻したんだから、整えて来ればよかったのに」
「――――ッチ」
「やめて、舌打ち」
家を出た時は遅刻する気なんてなかったのだから仕方ない。
まぁこれで良かったと思っている。なにしろ超絶美少女の愛川夏菜とお話しできたのだから。
そういえば……愛川はどこに――――
――――いた。太陽の如き笑顔を携えた超絶美少女。うん、見事に公太君と一緒ですね。幼馴染って、やっぱり仲良いんだなぁ。
「なんで俺の隣にはお前なんだ?」
「え? いきなり? なんでって……言わせんなよ、恥ずかしい」
「照れるなよ、気持ち悪い」
キモく照れる央平はおいといて……。
愛川に限らず公太の周りには人が多かった。
囲まれている……という程でもないが、男女共に数人のグループが楽しそうにお喋りをしている。
あれか、上位カーストってやつか。確かに愛川のように可愛らしい女性ばかりが集まっているし、公太ほどではないもののイケメンもいるな。
俺の視線に気づいたのか、央平が公太のグループを見て得心が言ったかのように頷いた。
「うちのクラス凄いよな。学園一のイケメンもいるし、四季姫が二人もいるんだから」
「しきひめ……? なんだよそれ?」
「はぁ!? 九郎しらないのか!? 去年から有名だっただろ!?」
「うっ……去年は……忙しくてな」
忙しいからなんだって話だ。別に仕事をしていた訳でもなんでもないのだから、学園の有名事を知らない事の理由にはならない。
去年は空手に打ち込んでいたので、忙しかったというのも嘘ではないのだが。
なんと言うか、本当に数か月前までは興味なかったんだよな。
興味がない……はおかしいか。青春や恋愛がどこか遠い世界の話だと勝手に思って、自分から遠ざかっていただけか。
意識しだしたらこれだよ。今はモテたくて仕方ねぇ。
「うちの学年にはさ、四季姫って呼ばれてる四人の美女がいるんだよ!」
「四人……しき……あぁ四季、春夏秋冬って事か」
「そうそう! んでアソコにいる、愛川夏菜がその中の一人だよ」
あぁ、夏ね。いいな~ピッタリじゃん。名は体を表すかぁ、俺も初めて愛川と話した時、そんな事を感じた様な気がする。
「そんな四季姫がこのクラスにもう一人いるんだよ! 六クラスもあるのに、四人の内の二人がこのクラスなんだぜ!?」
そう言ってキョロキョロと辺りを見渡し始める央平。
目当ての人物が見当たらなかったようで、『今はいないみたいだ』と呟いたのち、再び俺と向き合った。
「奇跡だろぉ? まぁ四季姫がズバ抜けて可愛いって訳じゃないけどさ、そういうふうに
「そ、そうかもな。春夏秋冬が名前に入る他の子達が可哀そうだと思うが……」
なかなか残酷だね。男どもが勝手に騒いでいるだけだと思うが、あからさまな格付けになっている。悪気はないのだと思うけど。
春夏秋冬のトップか。他の子には悪いけど、俺も容姿は才能の一つだと思っているし、他の男どもと変わらないな。
「そうそう九郎! 今日は授業なしの午前終わりだろ? 帰り、どっかで遊んでいこうぜ?」
「あぁ、別に構わ――――っ」
【ちょっと用事があるんだ】
【――――ッチ】
【いいよ、どこに行く?】
う~んでたぁ。
何気に、この選択って重要な気がする。恋愛ゲームにおいても、放課後の行動次第で様々なイベントが起こるしな。
まあ何も起こらない可能性もあるだろうけど。せっかく出たんだから、ちょっと行動を変えてみるか。
「――――ッチ。ちょっと用事があるんだよ」
「あ、そうか? って、舌打ちいる?」
少しも残念そうにしない友人を見て、特に問題ない選択だったと思う。
コイツと遊ぶとそれなりに金を使うのだが、バイトをしていない金欠学生の俺は、そんなに自由にできる金がない。
そういえば央平はバイトしてたよな。俺もなにかした方がいいかな。
なんて事をボンヤリ考えている内に担任の先生がやって来て、そのままホームルームへ。
なんと担任は荒先こと、荒木先生。う~ん若い女の先生が良かった、いるのか知らんけど。
――――――――
――――――――
「じゃあ九郎、また明日な~」
「おう、また明日」
そんなこんなであっという間に放課後。初日だしこんなものだろう、明日のスケジュールの簡単な説明などを受けて終わりとなった。
さて、友人の誘いを断ってまで選択したのだ。ちょっと用事があるとは言ったが、なんも用事なんかねぇよ。
さぁ、どうすればいいのでしょうか? カモン!! 選択肢!!
…………
……
…
おやぁ? なにも出てこないぞ? どういう事だ? イベントはどうしたのよ?
なにこのクソゲー。選択肢が出ないと、動くに動けないじゃん。
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