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シスター・クララが「折り入ってアイリスにお願いしたいことがある」と言ったとき、私の喜んだことといったらどれほどだったでしょう。何しろ私は彼女の役に立ちたくて、立ちたくてたまらなかったのです。
「でもアイリス、とっても大変なことなのよ。痛い思いをたくさんしなければならないの。あなたに我慢できるかしら」
シスターは何度も念を押しましたが、私はそのたびにうなずきました。ひとりで何でもやってしまうシスターが、ようやく私に頼み事をしてくれるというのです。どんなに難しいことであれ、それを叶えなければ私の気がすまないのでした。
シスター・クララは私の決意が固いことを見て取ると、私を近くの椅子に座らせ、片方の靴を脱がせました。靴下もするすると取ってしまうと、私の素足を撫でながら話し始めました。
「あのね、アイリスの足はとっても小さくてやわらかくって、かわいらしいでしょう。でもきっとこれからあなたが大きくなると、この足も一緒に大きく、かたくなってしまうわね。わたしには、それが残念でならないのです」
シスターが私の目を覗き込みました。眼鏡のレンズの奥で、灰色の瞳が魔法のように輝いていました。
私はもう一度、大きくうなずきました。
シスター・クララは以前からずっと準備をしていたらしく、必要な道具はすでに整えられていました。
まず彼女は沸かしたお湯を盥にあけ、そこに私の足を浸けました。温まった足をよく揉みほぐし、柔らかくするところまではとても気持ちがいいものでした。その後で足の爪を、できるかぎり小さく、短く削ることにも耐えられました。
ところがそれからなにかの膏薬らしきものを塗られ、指を内側に曲げた状態で、絹の長い布でぎゅうぎゅうと巻く段階になると、痛くてたまりません。私は座っていた椅子のクッションを強く握って、涙をこぼさずにはいられませんでした。もしも声を出せたなら、悲鳴をあげていたことでしょう。
シスターは私をなだめながら、それでも手を止めようとはしません。家事をするときと同じように手際よく、私の足を締めつけ、固定していくのでした。時間が経つにつれて足はますます痛く、おまけに痒くなるので、私は泣きながらそれに耐えなければなりませんでした。指を内側に曲げた状態では歩行もままならず、次の日はほとんど一日中ベッドの中にうずくまっていました。
これがシスターの仰っていた「大変なこと」なのだなと身をもって知りながら、しかし彼女を恨む気持ちにはなりませんでした。むしろ耐えるべき苦難があればこそ、彼女に報いることができるような気がして、私は喜ばしくすらあったのです。
シスター・クララは三日おきに足に巻いた布をほどき、最初の手順を繰り返しました。眼鏡越しの彼女の目はいかにも真剣で、まるで熟練の職人のようでした。
膏薬の効果と、布で巻かれるせいもあるのでしょうか。私の足の皮はだんだんと柔らかくなり、また肉も落ちてほっそりと、より小さく、青白く見えるようになりました。指は親指を残して足の裏側へ巻き込むような形に固定され、まるで先の尖った靴を履いているような三角形になったのです。
その頃には私もその足で歩くことに慣れ、以前とまったく同じようにとはいきませんでしたが、また普通に暮らすことができるようになっていました。ただ、布を巻き直すことにはまったく慣れず、何度施術を受けても目から涙があふれるのでした。
「中国に纏足という文化があって、これはそれの真似事なの。本当はもっと小さい頃から始めなければならないのよ。でもアイリスががんばったので、ごらんなさい、こんなに足が小さくなったわ」
そう言って、シスター・クララは陶然と私の足をさすりました。
オルガンの練習は、まだよちよちとしか歩けない時分に、とっくに再開されていました。ペダルを踏むたびに、足を刺されるような痛みが走りましたが、そうやって奏でられる私のオルガンは、以前よりもずっと美しく響いて聞こえました。
おそれ多いことですが、私はその痛みを、殉教者の味わう苦痛と同じもののように感じさえするのでした。そのことをシスターに伝えると、彼女は輝くような笑みをその顔に浮かべました。
「なんて素敵なんでしょう。そうよ、それが貴女の役目なの。ほかのことは全部わたしがやってあげる。貴女はそのかわいい足でオルガンを鳴らして、神様のためにお祈りをするのよ」
そう言われて頭を撫でてもらうと、私は本当に幸せな気持ちになって、足の痛みも、これまでの人生の辛かったことも、何もかも忘れてしまうのでした。
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