魔法の引っ越し屋さん

花道優曇華

第1話「引っ越しの魔法使い」

今、少し動くとすぐに汗ばんでしまう。

6月下旬頃、アパートの一室は

溜まりに溜まった家具などが外に

運び出されている。

私も自分の荷物をダンボールに

詰め込んでいく。

それが終わると母に呼び出されて

食器を新聞紙で包む。割れないようにする

ためだ。


翌日、土曜日。

朝はもう少し寝ていたかったが、

そうはさせてくれなかった。冷蔵庫、

洗濯機、タンスという重量物を

新しい家に運び入れるのだ。

それは自力で運ぶことの出来ないもの。

私が新しい家に待機してから1時間ほどで

母と引っ越し屋が同時に家にやってきた。

来たのは3人、全員若い男。

先輩の男の指示で冷蔵庫と洗濯機が

中に入れられた。

そして最後に2階にタンスを運ぶのだが


「この階段の幅だと運べそうに無いですね

ベランダから行きましょう。引っ張り

上げます」


下の階に行き、外に出る。

3人でタンスに布のようなものを

巻き付ける。一人が再び上に行き、

ベランダからロープを垂らす。

下にいた二人組は素早くタンスに

それを括り付けた。


「重いから細心の注意を払って!

せーのッッ!!」


下の二人が持ち上げて、上の一人が

引っ張り上げる。タンスはエレベーターの

ように浮き上がり途中で停止する。


「一人は靴を持って2階に来て!ダッシュ!」


一人が素早く動いた。数秒で階段を

駆け上がりベランダに来ると指示された

箇所を握る。


「タンスの真下に立たないようにね!」


もしもタンスが落下した場合、真下に

立っていたら下敷きになる。

ベランダにいる二人はたるんでいる

ロープを足で踏んで張る。


「せーのッッ!!」


タンスは更に上に。下にいた男にも指示が

出され彼もベランダにやってきた。

3人でタンスを持ち上げ、部屋に入れる。

時間は2分ちょっと。あの重いタンスが

この短時間で2階の部屋に入れられた。

引っ越しをする機会なんてほとんど無い。

だからこそ私は凄いと思った。

その後に私の部屋にLEDライトが

先輩らしき男によってつけられた。

その時間はまさしく"秒"で終わった。

彼らはこの仕事のプロ。

彼らにとっては普通に仕事をしているだけ

だろうが一般人の私達にとって、

彼らの仕事振りは魔法と言っても

過言ではない。


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魔法の引っ越し屋さん 花道優曇華 @snow1comer

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