第2話 彼女には友達がいません
「あぁ。また、目立っちゃった」
「どうしてそれを僕に言ってくるんだよ」
「いや、私がほかの女子から避けられてるからかな」
「当たり前だろ。あんな挨拶したら当然だと思うんだが。あとなんで僕はなぜこんなに距離を詰められてるんだろうか?」
「それはもちろん逃がさないためだよ」
「全力で逃げるよ。僕も友達出来なくなるじゃん!!」
「まぁ、そういうな。一緒にいれば私達は友達だよ?問題ない」
「いやむしろ問題しかないんだが!??」
なぜ、こんなことになったのか?僕はそもそも関わる気なんてさらさらなかった。ただ、彼女、楓と同じ教室に僕も配属していてついでに席も隣だったために即距離を詰められて話し相手にさせられてるという感じだ。
一刻も早く、この役回りを誰かに押し付けたいがよくよく考えれば、女子と話せるなんてこれが最後のチャンスかもしれないから話しておけと僕の童貞心がそんな風に語りかけてくるのが一番の問題だった。
「まぁ、とりあえず周りが慣れるまで一緒にいてくれよ。私も君しか友達がいないんだよ」
「いや、朝出会ったばかりだろ。僕ら」
「まぁね、でも私が漢達に襲われそうになった時貴方が追い払ってくれたんじゃない」
「いや、あれは完全に君が」
「へぇ、凄いじゃないか悠斗。やるなぁ。ところでお前達、どうやって仲良くなったんだよ?」
横から割り込んできたそいつは僕が今日一番会いたくないやつだった。校門前で事件を起こしていた目の前にいる少女以上に会いたくないやつ。中学の時の知り合いで、あんまりいい思い出がないというか、僕に降りかかる不幸の根源のような奴。
「会津、お前も同じクラスか...」
「そう睨むなよ、怖っええな。あの時は悪かったって前も言ったろ」
こいつのこのヘラヘラとした態度が俺には受け入れられない。僕と会津との間に不穏な空気が立ちこめる。このままだと殴り合いに発展しそうなくらい空気が詰まっている。だというのに、楓は全くその空気に気付いてないのか。
「へぇ、君の名前は悠斗って言うんだね。えーっと、性はっと」
「灰羽だよ」
僕は会津と話したくないため、咄嗟にくれた楓の助け舟に乗ることにした。会津と話すぐらいなら朝おかしなことばかり言っていたこの少女のほうがまだ話せる。
「んじゃ、これからよろしく悠斗」
「距離感近っか。せめて、灰羽で頼む」
「いや、悠斗は悠斗だから。これ決定事項だから」
と冷静なツッコミを入れるが彼女に無視され、僕は彼女の仲間の一員になってしまったようだ。彼女のおかげで天津との会話はそれきりになり、僕は自由奔放な彼女に同盟を結ばされた。
何かを失って何かを失った。損失ばかりだ。僕の高校生活は、入学初日から先が思いやられるばかりだ。
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