第50話 情報提供
「それにしても、こんな高そうな店、よく知ってたね。」
緊張からか、ちょっと顔色の悪い麻朝に、差し障りのない話を振ってみる。
こういうのは苦手だ。ひょっとして、差し障りなくないのか?
「え?」
麻朝は、驚いたように答えたので、僕はちょっと困った顔をしてしまったのだろう。
「あ、そうですね。中学生がVIPルームとか引きますよね。」
「いや、そんなつもりじゃないけど・・・」
「フフフ、飛鳥君って本当はすごく長生きなんでしょ?でも、こんなこと言ったら嫌かもしれないけど、なんか可愛いですよね。あ、女の子みたいとかじゃなくて、男の子としてです。」
「僕は、可愛くなんか・・・」
「あ、気に触ったらごめんなさい。父たちに飛鳥君を困らせることはしちゃだめだって言われてるんですけど・・・」
「ああ・・・」
「でも、養老君、ひどいなって思って。私からも父に言っておきますね。」
「あ、ああ・・・」
「フフ。飛鳥君てば、ああばっかり。そうそう、こんなVIPルームに中学生がって話ですけど、ここ、オーナーはおじいちゃん、あ、祖父、なんです。それで、いつもお迎えの車を待つ間は、危険なのでここにいなさいって。たまに友達と一緒にお茶するのも日課なんです。」
さすがに、裏でも有名な家、ということか。お嬢様ってやつだな。
「そ、そうなんだ。それで・・・」
「あ、そうですよね。本題、ですよね。」
その時、コーヒーとクッキーが運ばれてきた。コーヒーにはクッキーがついてるのだという。そういえばたまに高い店、とかでは、そういうサービスもあったな。
スタッフの人が出ていくと、麻朝は鞄の中から小さなティッシュを取りだした。
「これ。」
ティッシュを受け取る。
何の変哲もないティッシュ。
よく町で配ってる類いの物だ。
僕の、まだ年を重ねられた時代から、ティッシュ配り、なんてのは定番で、駅前やら繁華街では頻繁にあった。徐々に規制も増えて、減ったとはいえ、未だにゲリラ的に出没している。このティッシュを欲しがる人も少なくないから、場所を使われる者以外にとってウィンウィンだともいえるが・・・・これは?
僕は、麻朝を見て首を傾げた。
「広告の方を見てください。」
「?占いの館?」
2色刷のちゃちな広告。
占いの館KISEKIという名前と、携帯番号。ちょっとしたあおり文句。まぁ、占いという点では珍しい方とはいえ、さして特別感はない。なぜローマ字でKISEKIなのかは気になるところ。奇蹟か軌跡かしらないが、英語にするか日本語にするかはっきりしろ、と言いたいが、こういうのもまた日本ではめずらしいものでもない。
「そのチラシの裏を見てください。」
僕は言われるまま、チラシを引っ張り出し裏を向けた。
これは!
一応ベタではあるが、陰陽系の札で、霊を呼び出すものだった。
霊力がそこそこあれば実際に作動するだろう。
その下の方に、文字が書かれてある。
【フリーハンドでこの魔法陣をきれいな紙に写し、血を一滴垂らしてみてください。現れた奇蹟を信じるなら、フリーダイヤル0120*******。】
表側と違い、こちらはフリーダイヤル?
「何、これ?」
「噂では、これはいろんな種類の魔法陣があって、実際にフリーハンドで紙に写して血を垂らすと、なんか、会いたい人の顔が浮かび上がる、そうです。で、それを見た人は奇蹟だっとなって、指定のフリーダイヤルに電話をする人が結構いると聞きました。電話をかけたらいろいろ聞かれて指示があるそうですが、そこでの話は口外無用、ということで、ただ本当に奇跡が起こった、ということだけいろんな人に伝えるように、と指示されてるみたいで・・・」
たどたどしくだが、なんとなく言わんとしてることは分かった。
本当に反応する魔法陣に信じて、接触する人がいて、そいつらが、今の事件に関係してる、ってことだろう。
「で、これはどこで?」
「主に京都駅です。階段のところ。」
京都駅の階段、といえば、段のあるでっかい広場、といったところ。小さな出店がいろいろ並んでいたり、イベントなんかも開催される。
「他にも、結構色々なところで配ってます。観光地とかの周囲もあるし。」
「いろいろ聞かれて指示、ていうけど、その内容は分かる?」
「私も友達から聞いただけだから・・・でも、作った魔法陣をちょっといじって、あ、添削されて、って言ってましたけど、指定の場所に貼るみたいです。」
あー、そういうこと・・・
「麻朝ちゃんは、やってみた?」
「いえ、私は。私も霊能者の家系ですし、ちょっとは霊力もあります。こんな危険そうな物に関わりません。」
「良い子だ。」
「フフフ。なんか変な感じです。飛鳥君、なんか大人ぶってて、おかしいです。」
「いや、こう見えて、君のおじいさんより上だと思うけど?」
「でも、今は中2でしょ?それに年齢止まってるって・・・その精神年齢とかも・・・」
「はぁ。まぁ、いいけどさ。でも一応言っとく。僕が年齢が止まったのは18歳のとき。学年で言ったら高3だからね。」
「フフフ、はい、そういうことにしておきます。」
その後は、学校の、主にこれから行われる行事について説明を受けたり、同級生の情報を、こっちは望んでいなかったのに、いろいろされた。
1時間もすると、どうやら迎えの車が来たようで、喫茶店を後にする。
一度、家に来てくれませんか、という麻朝の申し出を断り、僕は、情報を共有すべく、メールを打ちながら、寮に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます