第14話 パーティー その2

 パーティー参加者が、僕に望むのは、簡単だ。いかに僕を使うか、それに尽きる。

 自分の懐に入れて、戦力にしよう、皆、そんな風に迫ってくる。

 但し、有力者は、政治的感覚での戦力であり、弱小者は、リアルに物理的意味合いでの戦力、という違いはあるが。


 淳平が用意した参加者リストは、要注意事項として、誰がどんな風に僕を取り込もうとするか、という予測が中心だった。それぞれの人物の相関図。現在有する戦力。僕を組み込むならどういう立ち位置か。どんな風に取り込もうとするかを予測した上での言質を取られない対応マニュアル。


 しかし、このマニュアル、全く僕を信用してないな。ほとんどどうやって会話を避けるか、が中心で、しかも避け方ってのが、淳平か蓮華、その他、とりあえず淳平が大丈夫と思う人の力を借りる、というものなんだから。

 まぁ機構の中枢にいるってだけで、ある程度は有力者であり、上位者であるのだから、家の力をも使えば、僕の周りには、ほとんどの人を退けられるスペックが揃ってるってわけだ。

 今、現在、本当の意味で危機が迫っているわけで、戦える人間としての僕を確保したい、という勢力が多い、というのが、ざっくりした結論なんだろうな。だからといって僕がどこかの勢力に組み込まれるなんてことは、あり得ない。そもそも僕にそれだけの自由なんてないのがどうして分からないんだろう。


 僕はそんなことを考えながら、今、目の前で、くっちゃべってるおっさんを見ていた。なんかネコ撫で声で気持ち悪い奴だな。なんで僕をそんなに褒めてるんだろう。じぶんが嘘くさいセリフを吐いてるんだなんて自覚はないんだろうか?

 大体、僕の容姿が、云々、戦いと関係ないだろうに。そういや、淳平の資料に、こいつのこと、ショタコンとか書いてたな。でも、それなら僕は関係ないな。どう考えても、僕が年上。仮に時の止まった以降カウントしないとしても18じゃ、守備範囲外だろうし。


 こいつからの撤退って、どうしろって書いてあったっけ。誰の下の人間だ?思い出せないや。


 はぁ~~


その時、頭上から盛大なため息が聞こえ、僕の頭に手が載せられた。


 「高岡さん、ご無沙汰しております。私のことは覚えて頂いてますか?」

 「あ、あぁ、そのこちらこそご無沙汰して申し訳ございません。その幸楽様のところの憲央坊っちゃんでございますよね。随分とご立派になられて、見違えましたよ。ハッハッハ」

 「随分とうちの飛鳥と親しいようですが、何を話してらしたんですか?」

 「え?うちの、と、おっしゃいますと、その、飛鳥君は、幸楽様の・・・」

 「ああ、いえ。隠居も随分飛鳥を可愛がっていますが、これは個人的に、と言いますか、まぁ私にとって、弟のような存在でして。」

 「はあ?言うに事欠いて、弟、っておかしいだろ。僕は78だ!時が止まった時でも18。お前より、上だよ!」

 「はいはい。いいから飛鳥は、黙って。大体ついさっき教えたこともできてないよね?文句言うなら、やることやってからにしてくれないかな?」

 『この男はショタだから、近づいてくる前に避ける。避けられないなら、蓮華さんを引き入れる、そう淳さんの資料に載ってましたよね。覚えてるときに、この人なら僕でもいいです、とも言いましたよね。て、忘れてるんですよねぇ。さすがに僕もさっきの時間は何だった、て、怒っちゃいますよ。ウフ、そうだ。後で覚悟しておいてくださいね。罰として、後でこの男の頭の中、追体験させてあげましょう。』

 実際の声と、心の声が同時に聞こえてくる。

 まったく器用な奴。

 て、追体験て何だ?わけわかんない。だがあんまり怒らせるのは、不利、と見た。さっきから、危険察知が止まらない。淳平と組まれちゃ、こっちはどうしょうもないよ。


 「飛鳥の好きそうな食べ物見つけたんだ。一緒に食べに行こうよ。約束したよね?あ、そういうことですので、高岡さん。我々はこれで。」

 「あぁもちろん。飛鳥君。君とはゆっくり語り明かしたいね。一度我が家に来てくれないか?また将来の話をしよう。」

 「ハハ。飛鳥にそれだけのゆとりがあればいいですね。その時は私もぜひご一緒させてくださいね。あ、もしかして迷惑ですか?」

 「あ、いや、その、まさか坊っちゃんが迷惑だなんて、そんなこと。ぜひご一緒下さいませ。」

 にっこり笑う憲央に、ヘコヘコと頭を下げるおっさん。こういうわけわかんない上下関係が、やなんだ。

 憲央は、ずっと頭に置いていた手を背中に下ろし、そのまま押すように、僕を食べ物が置かれてあるテーブルへと連れていった。

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