第13話 パーティー その1

 7月7日の夜は、毎年パーティーが開かれる。その年によって、派手だったり、最小限であったりと、規模は様々だが、今年はなかでも派手になる予定だそうだ。

 なんせ、史上最悪の侵攻を打ち破った日から60年の節目。この国では、干支がまわるといって、霊的にも大事なんだとか。


 そういうこともあり、今年は参加者も多い。機構に協力する全ての流派というか、霊能者を抱える組織に案内を出し、多くがそれに応えた、というところ。

 参加者を絞れば、結局は有力者メインで案内が出される。そうなれば、裏の世界=実質国を動かしている者達の、社交場だ。牽制、情報収集、探り合いから、敵情視察に取込み可能勢力の確認。

 腹の探り合いを笑顔の下で行いながら、主導権を取り合い、または誰のおこぼれに預かるかを見極める。


 今回のように、多人数になれば、それに、下剋上を狙う勢力、取り巻きに入り込みたい勢力、なんかが、さらにこの混沌を深める。



 僕ら、機構側とされる人間は、ほとんとせの者がどこかの後ろ盾を持っている。言い換えれば、どこかの家の所属で、そこから派遣されているということだ。それこそ、戦闘員から、売店のおばちゃん、掃除のおじさんに至るまで、どこかの本家やら分家やら出身。


 僕は、この中で、数少ない、どこの後ろ盾も持たない人間だ。一般家庭に育った僕は、それこそ、こんな腹芸の極地みたいなパーティーなんぞに縁がなかった。

 何度も、参加させられてはいるが、苦手なものは仕方ない。

 そもそも、僕の立ち位置が嬉しくないものだから、というのもある。

 僕は、機構でも特殊な位置にいる。

 腐ってもザ・チャイルド、というやつである。

 しかも、一応、最強なんて呼ばれている。

 先頭に立って戦い、侵攻を押し返し、最大のクラックを力技で閉じて、次元の融合を阻止した最大の英雄。


 フン、お笑い草だ。 


 表面的に見たら合ってるさ。

 あの時は、神とやらの屁理屈にムカついて、絶対に好きにさせるかと、飛び出した。

 先頭に立って戦ったのは、それしか能がないからだ。

 クラックを閉じたのは、ホントに本当のヤケクソ。僕が最前線にいて、しかも、術に色がないから、どんな術式を基礎に置く霊力も受け入れることができた。だから、みんなの霊力の集積所として、僕が使われただけ。


 あぁ、僕の一番の特殊なのは、そこかもしれないな。

 何度も言うが、僕は普通の家の出身だ。

 が、他の奴らは特殊な家に生まれて、特殊な教育を受けた、だ。

 霊能力、と一応は言ってるけど、その名称は流派により様々。

 宗派、流派によって、特殊な術式が形成され、その信奉するものの力をも取り込むことによって、他の術式と同時に発動するとエラーが起こることがわかっている。

 単純に打ち消すだけなら、そう問題はない。片方。または両方の術が発動しないだけだ。が、ひどい場合には術と術が反発して、爆発を起こすことがある。たまにではなく、ほぼこれが起こる。強力な術者どうしだと、それこそ化学兵器なんて目じゃない。なんせ、次元を超えての爆発だって起こってしまう。

 この爆発、一般的には術式反発、と言う。そして、これが起こった結果、次元を超えて霊的汚染が起こる。時には生命が存続し得ないほどに。これが術式汚染だ。


 実は、第2次世界大戦以降、この術式汚染と言われる汚染がおきたとき、原子力爆発のせいにされた。有名なのは、1986年のチェルノブイリ原発事故だ。

 当時の有名なエクソシストやら、エスパーやら魔術師やらが、かなりの数参加した侵攻の傷跡らしい。複数の流派の術が錯綜した結果、術式反発に次ぎ術式汚染が発生。大きなクラックは消滅したものの、むしろ小さなものは次々と今でも生まれている。最大の憂慮地点の一つだ。


 こんな風に、強ければ強いほど、術式汚染の懸念がある。

 だが、僕はそもそも術とかに信仰とか信念、とか、そういった思いが全くない。教えられて、複数の簡単な術は使えるし、指向性を与えるのに便利とは思うが、術と精神的癒着はないんだ。

 だから、あり得ないと思われていた複数の流派、いやもっと言えば宗教の違う術だって使える。また、その術を基本とする術を受け入れることもできる。


 どんな術者も、純粋な霊力を発出するにしても、染まってしまった色は抜けないんだという。だから、たとえばバフがけする場合も、あまりに術の形成が違う相手にはかけられない。

 僕は、その相手にかかわらず、あらゆる霊力を受け入れられるってわけだ。


 その資質を買われて、あのとき、その場にいた霊能力者の霊力を一身に受け入れ、その集積した力で、なんとか、神の計画を打ち破ったのだが、そのために、機構からも、そもそもが、ザ・チャイルドの中でも特殊な立ち位置に納まってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る