244.占い

 アカバネ祭も十八回目にして、その終わりを迎えた。


 僕は漸くステータスも戻って、学園を歩いていたり、レイラお姉さんが帝都を見たいとの事で、帝都を歩いていたりした。


 王都ミュルスも凄く賑わっているけど、帝都グランドはそれ以上の賑わいだった。


 帝都を端から端まで歩いていると一日でも回れなさそうだ。



 僕達は市場に来てみた。


 多くの商人達が皆それぞれの品を売っている。


 多く見かけるのは、雑貨品だった。


 こういう所ってもっと食料品とか、衣類とか売ってると思うんだけど、全然見かけない。


 寧ろ……雑貨しかなかった。


 あ……これって……もしかして……。



 それでも市場はとても活気づいていた。


 食料品や衣類は既にアカバネ大商会系列店には勝てないようで、こういう市場では商売にならないみたい。


 だから商人達は次の商品を探す。


 今、多く売っているのはアカバネ大商会が扱っていない商品だ。


 多くが雑貨類や、植物等の娯楽品が多く売り出されていた。


 こういう商人が売り残されている理由。


 それは食料品が安価で安定して供給されているからだそうだ。


 大陸の多くの食料類は、全てアカバネ大商会が引き取っている。


 『次元袋』があれば、幾らでも貯められるからね。



 そんな努力も相まって、多くの人達がお金を娯楽に使うようになってきた。


 終戦から数か月しか経ってないのに、既に戦争は忘れられ、人々は活気で溢れていた。



 市場でレイラお姉さんと歩いていると、


 路地の前にどうやら揉め事が起きていた。


「おいこら!! お前の言ってる事、全然当たらねぇじゃんか! 金返せ!!」


 若い男が、白髪のお爺ちゃんの胸倉を掴んで、怒っていた。


 このまま投げ飛ばす勢いだったので、僕が割り込んだ。


「あん!? 誰だ、て――――あれ?」


 男は僕を見つめると、驚いてお爺ちゃんと僕を交互に見直した。


「あ――――ひゃっは!!! 爺さん! 疑って悪かったな! これ詫び金だ! ありがとうな!」


 あれ?


 お兄ちゃんがお爺ちゃんに詫び金を渡すと、僕の前に来て、拝んでから向こうに走って行ってしまった。


 ん???


「あ~助かったわい、そこの人、ありがとうのぉ」


 お爺ちゃんが僕に礼を言ってきた。


「あの――お爺ちゃん、大丈夫ですか?」


「ほっほっほっ、もちろん大丈夫じゃ、本当に助かったの~あの男の事を占ってあげたら、『クロウティア様と出会って触れて貰える』なんて占いが出てしまったからの~それでいちゃもんを付けられていたのじゃよ」


 ええええ!?


 僕に触れて……貰える!?


 占い!?


「それにしても、そなたがクロウ・・・ティアかの」


「え? あ、はい、初めまして、クロウティアと言います」


 僕が挨拶すると、後ろのレイラお姉さんも一緒に挨拶した。


「お爺ちゃんは占い師なんですか?」


「ん? そうだとも~ほっほっほっ」


 占い師か~凄いな! 未来とか見えるのかな?


「どうじゃ、助けてくれたお礼に、クロウくんも占ってみるかの?」


「いいんですか!? 料金は払いますので、お願いします」


「ほっほっほっ、よいよい、私は別に金に困っているわけでない」


 さっきのお兄ちゃんから詫び金も貰っていたしな。


「そもそも、儂は金なんぞ無くても生きていけるわい」


「それなら、あのお兄ちゃんは何で占ってあげたんですか?」


「ほっほっほっ、それはのう」


 お爺ちゃんの目が鋭くなった。




「おぬしに会う為じゃよ、クロウティア・エクシアに」




 その言葉に、レイラお姉さんが僕とお爺ちゃんの間を割って出た。


「いやいや、儂は別に戦いに来たのではない、そもそも儂に戦う術はないのじゃからのぉ」


 お爺ちゃん……あまり強そうには見えないもんね。


 納得したようにレイラお姉さんが下がってくれた。


「お爺ちゃん、どうして僕を知っているんですか?」


「おお、儂はおぬしの事なんて、知らないんじゃよ。今日、ここに君が現れると占いで出たからここに来ておるのじゃ、さっきの男もおぬしと会う為の占いじゃ」


「ほえ~、お爺ちゃんの占いって凄いんですね!」


「ほっほっほっ、今日、儂は君を占う為にここに来たんじゃ、どうか占わせてくれるかい?」


「ええ、良いですよ」


 お爺ちゃん、悪い人には見えないから、僕の未来を占って貰う事になった。



 お爺ちゃんに案内され、机の前に座った。


 お爺ちゃんは机の上に水晶玉を上げると、それに手を触れるようにと言われ、水晶玉に手を触れた。


 目を瞑り、何かをブツブツ呟きながら水晶玉に手をかざした。


 ――――水晶玉が小さく光った。


 一分程、その状態のまま経過し、光らなくなり、お爺ちゃんが目を開けた。



「ふむ、死ぬ定めから逃げおおせたものの、悲しみの運命の下に生まれたかの……」


 死ぬ定め?


 悲しみの運命の下?


「クロウくんや、今、幸せかい?」


「えっ? ――――はい、とても幸せですよ?」


「ほっほっほっ、良い事じゃ、では占いで其方の悲しい運命を変える機会を教えよう」


 悲しい運命?


「このままでは、其方はいずれ、全てを失うじゃろう。全てじゃ」


 その言葉に息を呑んだ。


 何故だろう。


 お爺ちゃんの言葉に物凄い気迫を感じた。


 一切の嘘偽りがないと、肌で感じるようだった。


 そして、次の言葉は僕に深く刻まれた。



 絶対に悲しい運命が待っている。


 何故かそう確信した。


 だからお爺ちゃんの占い結果は、僕に何か大切なモノを教えてくれているようだった。






「迷いが生じた頃、東に向かいなさい。そして七つの鍵を集め、裏切りの間を開くのじゃ」

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