245.魔族

 帝都グランドの市場の路地裏の前に僕とレイラお姉さんはボーっと立っていた。


 何か……大事な事があった気がするけど……あれ?


 目の前に誰かがいたような気がしたけど――――いない?


 僕とレイラお姉さんはお互いの顔を見つめ、不思議そうな表情になった。


 何か覚えてなくちゃいけない事があった気がするけど、まあいいか。


 僕達はそのまま、市場を巡り、アカバネ島に返って行った。




 ◇




 それから数日後。


【ご主人様! 例の人達が集まったよ!】


「そうか! ありがとう、ソフィア」


 ソフィアが『次元扉』を作ってくれた。


 僕とセナお姉ちゃん、リサ、ディアナ、レイラお姉さんは『次元扉』に潜った。



 そこは、深い森だった。


 僕はすぐさま『精霊眼』を発動させて、目的の人達を見つけ出した。


「それじゃ、あの人達を捕獲しよう、僕の『影封印』は拷問に適しているから、捕まえちゃうよ」


 彼らの数は六。


 僕は闇に紛れ、彼らに『闇の手』六本を伸ばした。



 ――――そして。



 『闇の手』を最速で、彼らに付着させ、一瞬で『影封印』状態にした。




 ◇




 現在、僕は『異次元空間』の中にいる。


 僕の前には、さっき捕まえた六人の達がいた。



 ――――そう。


 実は、戦争が終わってからも、鼠達が動いている事を知った。


 戦争が始まる前、ソフィアの分体に追わせていた鼠の一人が生き残っていたのだ。


 戦争時は、帝国全土に『転移の結界』が張られてしまって、ソフィアは分体との交信が出来なかったみたい。


 ――イカリくんの時も、そういう事だったみたい……。



 教皇を討ってから、『転移の結界』が壊れ、やっと交信が出来るようになって、鼠に付着していた分体から鼠達が生き残っている事を知った。


 更に、鼠達が動いている事も。



 まず、僕のステータスが戻る前の間は監視する事にした。


 それで知ったのは、現在、残っている鼠の数は六名。


 つまり、『影封印』されている人数で全員だ。



 彼らが定期的に待ち合わせをしており、各町で潜んでいるようだった。


 機を見ていて、今日捕まえる事になったのだ。




「初めまして、鼠の皆さん……いや、からすの皆さんと呼んだ方がいいですか?」


 しかし、誰からも返事がなかった。


 それもそうか……。


 全員、既に自害・・を試していたのだが、この空間ではそれは出来ないからね。


 それから何を言っても、返事はなかったので、時を加速させてあげた。


 僕は五時間程しか経っていないけど、彼らは二十日程経っているはずだ。


 異次元空間に行ってみると、全員顔色が悪かった。


 それはそうよね……二十日間も何も飲まず食わずにいたからね。


 ただ、不思議なのは彼らの目からは理性を感じられない事だ。


 作られた人形のような……いや、作られた人間のような、そんな感じがした。



 う~ん、このまま放置してても仕方ないし……どうしようか。


 と思っていると、ソフィアが近づいて来た。


【ご主人様! この人達は私に任せて!】


 あとはソフィアに任せて、僕は外に出てきた。


 暫く『闇の手』が四本しか使えなさそうだ。




 ◇




「おかえり、クロウ」


 島に帰ると、皆が待っていてくれた。


「ただいま~、やっぱり鼠達は何も話さないね」


「そっか……でも、教皇はもう倒したんだから、大丈夫だと思うけど……」


「そうだね、カイロス教会も既に無くなっているから心配はしてないかな」


「あ、そう言えば――皆に話しておかなくちゃいけない事があって……」


 どうやら、リサが話したい事があるようだ。


 僕達は彼女に注目するも、ここでは話せないとの事で、屋敷の執務室に移動した。




「それで、リサ? どうしたの?」


「うん、えっと……皆は『魔族』について、何処まで知ってる?」


 魔族?


 僕達は全員首を傾げた。


 そう言えば、教皇は『魔族』だったね。


「先日、教皇が『魔族化』したんだけど、あれは厳密に言えば『魔族』ではないんだよ」


「魔族じゃない!?」


 驚く僕達に、リサは大きく頷いた。


「まずは、『魔族』と言うのは、『人族』がとある方法で『魔物化』した場合、『魔族』になるの」


 ええええ!?


 魔族って、元々人なの!?


「でも、一度『魔族』になった者は、一生『魔族』のままなの。擬態能力とかあれば別かも知れないけど、それでも『魔族』である事に変わりはないの」


 リサは紅茶を一口飲んだ。


 一度息を整えたリサは、


「教皇は、ずっと人だったわ。もし彼が『魔族』なら、私の『聖女の聖眼』が発動していたはずよ。現にあの戦いの最中、『魔族化』した際にはちゃんと発動していたから」


 あの時、確かにリサの右目は光っていたね。


「人が『魔族』になると、種族が『魔人』になるはずなの。そもそも、種族はステータスに載っていて、変えられないはずなの。でもそれを変えられる方法を、私も一つ見つけてしまって……それの説明とかもしたいなと思ったの」


 種族を変える方法か……。


「教皇は恐らく『魔族』ではなく『人族』で間違いないと思う。そして、あの日やったのは……多分『魔人化』だと思う」


「『魔人化』?」


「うん。どういう方法でそれを使えるかは分からない。でも私もそれを確認しているから」


「リサちゃん、その確認した――――って事は、リサちゃんも『魔人化』出来たって事?」


「いいえ、私が確認したのは――――『天使化』です」


「「「『天使化』!?」」」


 あー、もしかして……。


「くろにぃの『神格化』で種族を変えられました。つまり、教皇も『魔人化』というスキルを持っていたのかなと予想出来るの」


「あ~、確かに……僕の種族………………『女神』になっていたね……」


 実は、『神格化』で『女神化』していた時、ステータスを確認したら、種族もちゃんと『女神』ってなっていた。


「でもクロウの力は特別なモノだと思うわ。仮に教皇が『魔人化』していたとして、他にも使える人がいるかまでは――難しい所ね」


「はい、その通りです。ですけど、本来の『魔族』なら私の目ですぐに見つけられるはずです」


「本来の『魔族』――――という事は、『魔族』は実在しているって認識でいいのね?」


「はい、セナさんの睨み通り、『魔族』は実在しています。恐らくですけど、今までは教皇が何らかの方法で『魔族』を防いでいたのかも知れません。確証はないんですけどね」


「確証はなくても、何か思い当たる節はあるのでしょう?」


「――――はい。世界に……瘴気が、少しずつ、ほんの少しだけど少しずつ、濃くなってます」


「「「「瘴気?」」」」


「うん。世界には多少なりとも『瘴気』というのは漂っているの。なので、普段なら大した問題はないんだけど、ダンジョンとか瘴気が濃い場所に居座り続ければ、人でも悪い思想になりやすくなったりするの。

 完全に思考が変わるには、数十年間ずっとダンジョンにいないとならないくらいなんだけどね……でもね、このまま世界に少しずつ増えていくとなると、数百年後には世界が大変な事になるの」


 リサの衝撃的な言葉に、僕達は言葉を失った。


 数百年と言っても、それは今の状態であって、それが加速しないとも限らない。


 何らかの理由があると考えた方が良いと思う。


「分かった。これからは『魔族』と『瘴気』について調べる方向にしよう」




 『魔族』や『瘴気』という言葉を聞く度に、僕は何故か不安を感じていた。




――後書き――――――――――――――――――――――――――――――――


日頃『被虐待児の最強転生して優しい家族に囲まれ』を愛読してくださり、ありがとうございます!


この話で『終戦編』も終わり、戦争編終戦編の戦争パートは終わりになります。


次の編からはまたほのぼのとした編が少し続くと思いますので、ゆっくり楽しんで頂けたら幸いです。


クロウくん達の未来に待っているモノは一体――――皆様もぜひ、予想しながら読んでみてください!


では次の編に向かって作者の一言と共に、後書きを閉めたいと思います。


これからも囲まれをよろしくお願いします!










「リア充爆発!!!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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