238.カナン
僕達は『女神教会』建設予定地に来ていた。
目の前には大きなクレーターが出来ており、雨によって大きな湖になっている。
今回の戦争に参加した全ての国の重鎮達。
教会の枢機卿達と高僧達。
アカバネ大商会の面々。
全員、真っ黒い喪服を着ていた。
――『星が落ちた日』の弔いの為だ。
一番前には『女神教会』の『教皇』となってくれたセシリアさんが死んだ者達に祈りを捧げている。
この場にいる全ての者は、セシリアさんの祈りの言葉に耳を傾け、涙を流した。
――イカリくん。
僕ね。
奥さんが四人も出来たんだ。
……イカリくんには、僕が全然モテないよって……話ていた……頃が……懐かしいね……。
…………僕があの時…………ううん、もしもとか……話しても……変わらないから……。
イカリくんは今頃、天国にいるのかな?
天国で僕を見てくれていたりして…………。
イカリくんから貰った手紙。
今では僕にとって一番の宝物だよ。
君がいなくなっても……君を……思い出せるから…………だから、どうか……。
安らかに休んで…………。
◇
死者への祈りが終わり、僕達を残し、皆、帰って行った。
これからアカバネ大商会による、大工事が行われ、この地に新しい『女神教会本部』の地が生まれる事になるのだ。
僕はまだ先日の代償で、力が使えない状態だから、ソフィアに手伝って貰う事になった。
予定としては、クレーターをそのまま残して、湖として残す事にした。
この湖の名は『ホフヌグの湖』となった。
最初に湖の中央に、大きな柱を作り、土地にする。
更にそこまで橋を架ける。
橋が完成すれば、次は土地の上に教会や家を建てる。
大きさは以前あった『ホフヌグ町』よりも広くする予定だ。
そこには『女神教会』の町が出来て、その町の名を『
この町は全てが『女神教会』と『アカバネ大商会』によって運営される予定となっている。
「それでは、ソフィア。悪いけど、僕の代わりにお願いね?」
【ご主人様! 任せて! 私が代わりに頑張るからね!】
その時、異変が起きた。
異変と言うか……僕の奥さん達四人が、ソフィアを取り囲ったからだ。
ええええ!? 皆、どうしたの?
「ねえねえ、ソフィアちゃん?
【えっと……私が、代わりに……頑張る?】
「「「「ほわああああ!」」」」
そして、いきなり四人はソフィアを抱きかかえた。
小さなソフィアを四人が取り囲ってる様子はちょっと怖いモノを感じる。
「みんな、どうしたの??」
僕とレイラお姉さん、セシリアさんは何事なのかと、彼女達を見つめていた。
そんな中、ナターシャお姉ちゃんが代表して答えてくれた。
「クロウくん! 凄いの! 今のソフィアちゃんの
「ええええ!? 今の言葉って……もしかして『パス会話』が聞こえる!?」
「ええ! 聞こえるようになったわ!」
今までソフィアの
声と言っても『パス会話』だけどね。
それが、何故か僕の奥さん達に聞こえるようになったみたいだ。
「どうして、聞こえるんだろう? セシリアさんとレイラお姉さんは聞こえないよね?」
二人は頷いて返してくれた。
【あ! もしかしたら……指輪のおかげかも!】
そう話すソフィア。
そう言えば、この四人の共通点。
僕との
「この指輪って、ずっとソフィアの
「とにかく、ソフィアちゃんの声が聞こえて、とても嬉しいわ! ソフィアちゃん、いつも私達を見守ってくれてありがとうね!」
【うん! 私もありがとう!】
ますます撫でられるソフィアだった。
今までソフィアが作った物では、こうなる事はなかったんだけどな……もしかして何か条件が必要なのかも知れないね。
それからソフィアには土属性魔法を使って貰って、湖の中央に広い土地を作って貰った。
後は橋も架けて貰った。
完成した橋と土地に、既に準備していたアカバネ大商会の職人隊が飾り等を素早く付けて行った。
その速さは最早神業に等しく、一切のズレもなく均等に付けられる飾りを見ながら、うちの職人さん達がどれほど凄いのかが分かるほどに魅入られた。
どうやら、レベルを簡単に上げられるようになって、ステータスが上がり、作業効率も物凄く上がったと報告にあったけど……物凄く上がったの物凄くの部分を僕は履き違えていたみたいだ。
物凄く所ではなかった。
爆速……もはや、神速だった。
◇
◆カナンの町が作られている傍で◆
ホフヌス湖にソフィアによるカナンの町が建設し始めた頃。
湖を眺めている一人の女性がいた。
彼女はマリエル。
元々、グランセイル王国内でも有数の貴族家の者だったが、現在はアカバネ大商会の従業員となっている。
彼女は、自分の従弟に当たる、弟のように接してきた者をこの地で亡くしていた。
彼女は湖を眺め、止まる事のない涙を流している姿を見守る男がいた。
彼女の後輩であり、今では相棒である。
そんな彼女の姿に彼も胸が裂けそうだった。
――――あの日。
彼は彼女を亡くした虚無感を知った。
奇跡的に彼女が生きている事を知った時は、喜びに全てを失っても良いとさえ思えた。
そんな痛みを知っている彼だからこそ、今の彼女を守りたいと思えた。
彼は――――悲しむ彼女に一世一代の想いをぶつけた。
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