終戦編

230.終戦

――前書き――――――――――――――――――――――――――――――――

ここから終戦編が始まります。

ですが、実は、ちょっとだけシリアスな話が続きます。

申し訳ございませんが、最後まで付き合ってくださると幸いです。

更に、時系列がポンポン飛んでるので、場のノリ?で読んで頂けたら幸いです。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 戦争が終わって、一週間が経過した。


 僕はというと、ずっとアカバネ島で休養を取っていた。


 僕が特殊な力を使ったせいで、一か月間ステータスが激減した事がお姉ちゃんにバレてしまった。


 リサ……皆に言わないでとあれだけ言ったのに……。


 私を天使にした罰だよって……だって、あれはリサが何でもするって言ったからね!



 この戦争で一躍有名になったのは、言うまでもなく、一番がリサだ。


 リサは戦場と王都と帝都で「『聖女』アリサの名の下に」なんて言ってしま…………僕に言わされてしまったからね。



 教会はリサの事で大混乱――――と思いきや、全然そんな事なくて、寧ろ、教皇と枢機卿五人が行方不明・・・・になっていて、それ所ではないようだ。


 魔族の襲撃により、真っ先に死亡したと噂になっているらしい。



 今は『現聖女様』と崇められていたセシリアさんが『教皇』に代わり、帝都で信者達をまとめているとの事だ。


 リサはその手伝いで、帝都にいて、本物の『聖女様』と崇められているらしい。



 次に、一躍有名になったのは、セレナお姉ちゃんとディアナだった。


 まず、セレナお姉ちゃん。


 既に『剣聖』として、大陸中で有名だったけど、此度の戦争で、その力を惜しみなく発揮して、多くの連合軍の兵士達の記憶に残ったそうだ。


 その兵士達の話から、噂となり、それはやがて、お姉ちゃんを『英雄』と呼ぶようになっていた。


 『剣聖』セレナディア。


 ――そして、『英雄』セレナディア。


 彼女は既にグランセイル王国の誇りになっている。



 そして、次がディアナ。


 ディアナはセレナお姉ちゃんと帝国の『剣聖』さんと一緒に、『戦慄の伯爵』と戦った事を多くの兵士達が見ていた。


 ――獣人族。


 中央大陸中で貶されてきた獣人族。


 その者が、人族を守るため、人族の最強たる『戦慄の伯爵』に向かった。


 それだけで、多くの者が勇気を貰った。


 獣人族の英雄。


 それを、世界では『英傑』と呼ぶ。


 『英傑』ディアナ。


 大陸中にその名と共に、獣人族だけでなく、多くの蔑まれている人々に勇気となった。





 今回の戦争で、沢山の辛い事があった。


 僕も数えられない程、悲しみを背負い、何度も泣いて、心が挫けた。


 それでも僕達は生きていかなくちゃならない。


 お父さんが言っていた「人は生きる為、歩み続けなくてはならない」という言葉。


 今なら分かるような気がした。


 僕もまたここから、生きて行くよ。




 ◇




 久しぶりにセレナお姉ちゃんが島に来てくれた。


 色々忙しくて、島に来る暇もなかったみたい。


 今では『英雄』様だからね!


「ねえ、クロウ」


「うん? どうしたの? お姉ちゃん」


「…………先日話した事、変えるつもりはない?」


「…………うん」


「そっか、大丈夫。クロウの事はお姉ちゃんが守ってあげるから。クロウは自分が思った事をやり遂げて」


 セレナお姉ちゃんは何処か寂しそうな顔をしていたけど、すぐに笑顔になった。


 ――――無理して作った笑顔。


 お姉ちゃんを長年見てきたからこそ分かる……そんな笑顔をしていた。




 もし、この時、僕が違う返事をしていたら……結果は変わっていただろうか?


 この時の僕は、これから起こる事を知る由もなかった。




 ◇




 ◆エクシア家、屋敷内◆


 現在、エクシア家当主のアグウスの執務室に三人が集まっていた。


 父、アグウス・エクシア。


 母、フローラ・エクシア。


 ――そして、娘、セレナディア・エクシア。



 重い空気の中、アグウスが口を開いた。


「セレナ――――覚悟に変わりはないな?」


「――はい、お父様」


「セレナ……貴方は……いつまでも、私達の……愛娘よ?」


「お母様。はい……私もずっと……」


 母と娘は涙を流し、抱き合った。


 それを見る父もまた、辛そうな表情をしていた。


「セレナ……ごめんなさい……貴方を……産――」


「お母様、私は幸せですわ……お母様の娘で誇りに思いますわ……」


 二人を見つめる父が「では、決行しよう」という言葉に、二人は深く頷いた。




 ◇



 ◆王都ミュルス王城内◆


「アグウス……本気……なんだな?」


「ははっ、陛下には……此度のおいを聞いて頂き、感謝申し上げます」


「良い、お主には既に返しても返しきれない恩義がある。こんな事くらい他愛もない……が、しかし、本当に良いんだな?」


「はい、本人の気持ちを遵守したいのでございます」


「そうか……本人がか…………あの男にそこまでの価値があったとは」


 グランセイル王国の王、アルデバラン・グランセイル王は深く溜息を吐いた。


 グランセイル王国の英雄、アグウス・エクシアから提案された件が、自分が想像していた事よりも、遥かにそれ以上だった事に、王も覚悟を決めたのだった。

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