229.女神が降臨した日

 僕は目を覚ました。


 両手には、温かい体温を感じていた。


 目の前の――――リサが、生きている。




 ほんの数分、僕は眠っているリサを覗いてみた。


 前世の面影が一切ないのね。


 こうして、君をまじまじと見るのは…………初めてかも知れない。



 ――リサが目を覚ました。


「あ……れ? こ……こは?」


 僕は何も言えず、ただリサを抱きしめた。


 ――ありがとう。


 また僕の隣にいてくれて。


 訳も分からず抱き締められたリサも、僕を抱き締めてくれた。




 ◇




「成程ね……私……一応、一度死んだんだね……」


「ごめん……」


「ううん。あれは仕方ないよ。でも、くろにぃ」


「うん?」


「助けてくれて、ありがとうね」


 笑顔のリサが眩しかった。


 その笑顔に、僕も笑顔になった。




「そう言えば、力……ってるんだっけ?」


「うん。どうやら『クロノスリザレクション』を使うと、一時的に全てのステータスが物凄く下がるみたい」


 神様こと、お爺ちゃんから力を無くしてもリサを生き返らせたいかと聞いたけど、あれはどうやら僕の気持ちを確かめるための、脅しだったみたい。


 目が覚めた時は、既に『クロノスリザレクション』を使用した後だったので、僕に使用した記憶はない。


 『クロノスリザレクション』の使用はメティスから聞いた。


 これから暫くの間、ステータスが物凄く下がるそうだ。




「って、あああああ! くろにぃ!?」


「うん?」


「悠長な事言ってる場合じゃないでしょう!!!」


「え?」


「今、戦争中だよ!!」


「あっ! そうだった!」


 リサを見てるだけで幸せになって、戦争中なの、すっかり忘れていた!


「どうしよう……くろにぃが弱ってるから……どうやって戦争を止めればいいんだろう……」


 あ……あはは……これは……あれをやるしかないのかな…………はぁ。


 僕の少し引き攣った表情を、すぐに察知したリサが、顔を近づけてきた。


「ねえ、くろにぃ? 何か隠しているよね?」


「あはは……何とか出来るかも……知れない」


「え! じゃあ、早くしよう!?」


「えっと……、はあ、仕方ないよね。緊急事態だもんね……リサにも手伝って貰うよ?」


「うん! 私に出来る事なら、何でもするから!」


「今、何でも、すると、言った、うん。よし」


「えっ……と? ちょっと、言っちゃいけない事……言っちゃったかな?」


 僕の不敵な笑みに、リサが少し後退りする。


 だが、既に何でもすると言ったのだ。


 今更、後悔しても、もう遅いんだ!


「それでは、行くよ!!」




 ◇




 ◆前線◆


「く、くあああ、もう疲れた!!」


「ボス! まだまだですよ!」


「え~だって、もう魔力MPも少ないし~」


「ほら! フライトさんもあんなに頑張ってるじゃないですか!」


「くっ……そもそも! フェルメール爺は何で戦わないんだ!!」


「フェルメール様は、ほら、雷属性だけ・・苦手で、く撃てないみたいですよ?」


「くあ~もう! 向こうの剣聖ちゃんが言っていた助けは、いつ来るんだよ!」


「そんな事言っても始まらないから、ほら! また帝国軍が来ましたよ! 速く気絶させないと、皆、連合軍に殺されちゃいますよ!?」


「ぐっ……ここは頑張らねば……」


 『大器の賢者』アレクサンダーは、渋々立ち上がった。



 ――――その時だった。











 戦場に奇跡が起きた。


 空から眩い光と共に、二人の人影が降臨する。


 その姿はあまりにも神々しく、誰もが降りてくる彼女を見つめた。


 ――催眠術に掛かっているはずの、帝国の兵士達もまた。











「双方、戦争を止めなさい。わたくし『聖女』アリサの名の下に、この戦争は終結した事を、ここに宣言致します」











 戦場にいる全ての人々に、その美しい声が聞こえた。


 その声はまるで、目の前で話しているかのように、全ての者が聞こえていた。


 二人が戦場の真ん中に降りた。


 二人の背中には、美しい四枚の羽が生えている。


 ――――まるで、天使のようだった。



「こちらには『女神クロティア』様が降臨なさいました。わたくし『聖女』アリサが代行して、全ての者に『神託』を授けます!」


 『神託』の言葉に、戦場にいる全ての者が跪いた。


「この戦争は魔族による人族を騙し撃つ為の戦争です。人の子らよ、どうか武器を捨て、目の前の同胞を慈しみなさい。其方らの罪は、全てこの『女神クロティア』が赦免しゃめん致します」






 その日。


 世界に奇跡が起こった。


 大陸最悪の戦争になる寸前だった戦争は、『女神』によって、終戦を迎える。


 その日を、『女神様が降臨した日』として、大陸の長い歴史に記録される事となる。



 『女神』は戦場だけでなく、アーライム帝国の帝都、グランセイル王国の王都にもその姿と共に『神託』を下した。


 人々の戦争に神々が心を痛めた為、降臨した。


 その現実に、多くの者が涙を流し、そして、悔やんだ。



 こうして、世界は、また平和を取り戻すのであった。











 ――――束の間の平和を。




――後書き――――――――――――――――――――――――――――――――


ここまで『被虐待児の最強転生して優しい家族に囲まれ』を読んで頂き、誠にありがとうございます!


この話しで『戦争編』が終わりになります。

皆様、『戦争編』はいかがでしたか?

次からまたほのぼのと……したりしなかったりする『終戦編』が始まります。

『戦争編』と『終戦編』は二つで一編なので、『戦争編』だけだと短い編に見えるかも知れません。


そして、その先、クロウくん達は衝撃の事実を知る事になります。(多分)

まだまだ続きますので、読者様も是非、予想しながら読んでみてください!

その時々、コメント等に予想等書いて頂ければ、作者がニヤニヤしながら嬉しい思いをするかも知れません!

それはノーコメントで!(ニヤニヤ)的なコメントには『( *´艸`)』だけ返したりしております。


この『戦争編』面白かったよ!と思う方は、

是非フォロ……は既にして頂けていると思うので、

是非おすすめレビューの『★』を沢山入れて頂けると嬉しいです。

既に3つだよ!と言う方は、本当にありがとうございます!!!!!


次の編からも宜しくお願い致します!!!


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