220.サテラ枢機卿
案内された部屋には一人の女性は待っていてくれた。
彼女の名はサテラ枢機卿。
枢機卿歴史上、初めての女性枢機卿だ。
中級回復魔法使いであり、お母さん同様、『リフレッシュ・ヒーリング』が使える希代の回復士の一人だ。
「セシリア様、お久しぶりでございます」
「サテラ様……」
セシリアさんがサテラさんの手を取った。
「!? セリスさん――それは?」
「サテラ様、申し訳ございません……」
セリスさんを見たサテラ枢機卿は驚いた。
『分析の魔眼』を持った、サテラ枢機卿の腹心の一人だ。
そんな彼女の目には今『烙印』が付いている。
「その『烙印』は僕がつけています」
僕の声に、サテラ枢機卿は僕を見つめた。
その澄んだ目は、正義感に溢れていた。
「貴方達は
「……そうでしたか、恐らく、彼女に
サテラ枢機卿は僕に顔を下げた。
とても誠実な方のようだ。
「それで、どうしてセシリアさんを探していたのか、お聞かせください」
僕の言葉にサテラ枢機卿はセシリアさんやルシオさんを見つめた。
二人共、大きく頷いてくれた。
「そうですか……、まだ貴方様がどういったお方なのかは知りませんが、セシリア様を連れて来てくださった方なら、信用するに値するでしょう。では今の教会から説明しましょう」
サテラ枢機卿の説明が続いた。
まず、既に枢機卿の五人が教皇派となっていて、教皇は独裁を始めている。
教皇に直属の暗部があるとの噂。
定期的に奴隷や信者達は失踪していて、その裏が教皇であると思われる。
グランセイル王国とアカバネ大商会に対する戦争は、全て教皇独断で宣言している事。
王家は何らかの弱点を握られているようで、逆らえない様子。
以上がサテラ枢機卿からの情報だった。
「それで、何故セシリアさんが関係しているのですか?」
「はい、セシリア様は最上級職能『教皇』です。その力でも、貢献度でも、次期『教皇』になれます。今なら……セシリア様が教皇にさえなって頂けるなら、まだ間に合うかも知れません」
そういう事か……正式的にセシリアさんの『教皇』とする事で、現教皇をその椅子から引きずり下ろす事が出来ると……。
しかし、そう上手くいくとは思えなかった。
「分かりました。まずは貴方達は
僕はスキル『対魔眼封じ』を解いた。
セリスさんの目から『烙印』が消えた。
更に、僕は彼女に『ハイヒール』を掛けてあげた。
「なっ!? 回復魔法を……無詠唱で!? 貴方様は一体…………まさか! ――――クロウ様でございますか?」
「え? 何故、僕の名前を?」
「黒髪、碧眼、美しい顔立ち……そして、回復魔法。聞いていた通りでした」
サテラ枢機卿はどうやら僕を知っている?
「申し訳ありません、実はとあるお方から……もしもの時は貴方様を頼るようにと言われておりました。ただ……あのお方は貴方様の事を決して口外はしておりません。知っているのは私だけでございます……どうか、あのお方を責めないでください……」
「えっと……まず誰なのかを知らないと、責めるのも責められないというか……」
「そうでしたね、ここにいる者達は全員信頼するに値する者達ですから、話させて頂きます。私に貴方様の事を話してくださったのは……アデルバルト・ドラグナー伯爵様でございます」
……
…………
誰??
「えっと……知らない人ですけど……」
「あら? あ……そうでした、ではこう言えば分かりますでしょうか。アドバル奴隷伯爵――と」
「!? 奴隷伯爵さんって本物の伯爵様だったの!?!?」
「ふふっ、聞いていた通り、可愛らしいお方ですね、ふふっ」
あれ? そう言えば『アデルバルト・ドラグナー伯爵』って何処かで聞いた事あるような……?
【クロウくん、『アデルバルト・ドラグナー伯爵』は帝国最強騎士『戦慄の伯爵』だよ】
そうだった!!
帝国最強騎士『戦慄の伯爵』さんだ!!!
そうか……奴隷伯爵さんの本物って物凄く強かったもんね。
納得した……。
「あ、そう言えば、伯爵はどうしてサテラさんに僕の事を?」
「はい、それは……教皇の独裁を最も良しとしていなかったのが、伯爵様です。彼は秘密裏に教皇を調べておりましたから、それを私にも相談していました…………自分にもしもの時は、貴方様を頼れば、きっと希望になってくれるかも知れないと……それに、彼とは幼馴染なのですよ」
幼馴染!?
「ええ、子どもの頃、教会の礼拝で良く会っていたのですよ、ふふっ」
伯爵さんの珍しい過去について知る事が出来た。
そう言えば、当の伯爵……確か、おじいちゃんと東軍で戦った相手が、『戦慄の伯爵』のはず……。
以前見かけた時とは、全然
――――本陣衝突まで、あと5時間。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます