221.突入!教皇の間

 サテラ枢機卿との面会も終わり、教皇について急いで調べる事にした。


 まず、サテラ枢機卿の配下という事で、僕とリサとセシリアさんが加わり、教会に向かった。


 そして、サテラ枢機卿から仲間であるブリュンヒルド枢機卿も紹介された。


 ブリュンヒルド枢機卿は思っていた枢機卿と違って、若い枢機卿だった。


 何でも、バレンタイン枢機卿の代わりに枢機卿になった方らしい。


 バレンタイン……何処かで聞いた事あるような……。



 僕達は枢機卿の部屋に入り、精霊眼を全開にした。


 ――そこで、見つかったのは、僕の想像を遥かに超えるモノだった。


 ここ教会本部の真下に色んなモノがあった。


 人、動物、モンスター、数えられない程の生命反応があった。



「地下……ですか? いいえ、教会本部に地下は存在しておりません」



 サテラ枢機卿とブリュンヒルド枢機卿も地下の存在は知らないという。


 精霊眼でより深く覗いてみると……


 どうやら地下への入り口は教皇の間にある、教皇の座の後ろから降りれるようだ。


 良く見ると、地下に教皇と思われる人と、枢機卿と思われる五人もいた。



 これで教皇が確実に『黒』である事が発覚した。


 僕達の……いや、世界のだ。



 前線がぶつかるまで、後十時間を切っている。


 僕達四人で地下に突入する事にした。


 恐らく大きな戦闘になるはずなので、枢機卿の二人には、地上での混乱を任せた。



 そして、僕達は『教皇の間』に入った。


 そこで待ち受けていたのは――。


「オーウェン様……」


「セシリア様……」


 真っ白い鎧、大剣、大盾。


 そして鎧に書かれている光の模様。



 リサから話しは聞いていた。


 『聖騎士』の騎士長であるオーウェン・ローラン。


 その強さは、『戦慄の伯爵』とも比較され、大陸でも数本指に入る強者だ。


 セシリアさんとは幼い頃から仲が良かったと聞いている。


「オーウェン様も戦われるんですね?」


「…………申し訳ありません。私は教皇には逆らえないので」


「そうですか……クロちゃん、ここは私に任せて貰っても良いかな?」


「分かりました。危なくなったら、ちゃんと逃げるんですよ?」


「ふふっ、心配ないわ。私強いから!」


 ええ、知ってますとも。


 僕達の前世のお母さん。


 凄く強いの知ってますから。


 だから、ここは任せる事にした。



「ここは、誰一人、通さん」



 オーウェンさんから放たれた威圧感が僕達を襲った。


 その中をセシリアさんが前に出る。


 ――――そして。



「神々の楽園、全開」



 セシリアさんからも凄まじい威圧感が溢れた。


 優しくも雄々しいあの威圧感は、僕達を包み、オーウェンさんをも飲み込んだ。



「!? まさか……ここまで強いとは……」


「オーウェン様、行きますよ?」


「ッ!」



 セシリアさんが専用武器を取り出した。


 よりにもよって、何でその武器なんだろうとは思うけど、使いやすいらしいのでいいのかも知れない。


 セシリアさんの専用武器、両手大槌がオーウェンさんを襲う。


 オーウェンさんが大盾で防ぐも吹き飛ばされた。



「クロちゃん! 今よ!」



 僕達はセシリアさんを残し、教皇の座の後ろにある隠し入り口から地下に降りた。




 ◇




「まさか……セシリア様がここまで強くなられるとは……」


「オーウェン様、私はもう逃げませんわ。だから私も戦います」


 セシリアは両手大槌を片手で持ち上げていた。


「――――、ホーリーランス、ダブルマジック!」


 セシリアの詠唱で光の槍が現れた。


「くっ」


 光の槍と共に、強大な槌がオーウェンにぶつかった。


「剣技! ホーリックバースト!」


 オーウェンの光る衝撃波と大槌がぶつかった。


 しかし、大槌はビクともしなかった。


 この大槌。


 ソフィア作の特殊な大槌だ。


 元々、攻撃用ではなく、防御用として作られた大槌は、言うなれば、殴る大きくて重いだ。


 ソフィアはその大槌に、相手の攻撃衝撃を吸収するよう作り上げた。


 本来なら防ぐためのモノだからである。


 どれ程強力な衝撃も大槌は衝撃を和らげつつも、本体の重さで攻撃をする、攻防一体化した武器だ。



 セシリアの素人のような振りでも、その圧倒的なステータスで振り回す大槌は、最早攻城兵器にも等しい程のパワーだった。


 更に、どれだけ弾こうとしても、大槌の特殊な特性の為、全然弾けない。


 歴戦の戦士であるオーウェンもその攻撃には成す術もなかった。


 じわじわと自分が押されている事に気が付くオーウェンだった。




 それから一時間程殴られたオーウェンは、聖騎士の大盾が粉砕され、セシリアに敗北した。


 ――――のちに、歴史上、聖騎士の大楯が粉砕されたのは、たったこの一件だけと伝わる事となるのであった。




 ――――本陣衝突まで、あと4時間。

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