218.分析

 僕はセレナお姉ちゃん達によって、何とか正常に戻った。


 まだ、僕にはやらなければいけない事があるから。


 ずっと悲しんでばかりいては、イカリくんに怒られるかも知れないから。



 冷静になった僕はもう一度焼け跡を見つめた。


「メティス」


【はい】


「この焼け跡に残ってる魔力の残滓ざんさいを調べる方法はある?」


【ソフィアちゃんが、大気中に残っている残滓を取り込めば分かるはずよ】


 それを聞いたソフィアは、返事もないまま、速やかに大気中の残滓を取り込んだ。


 そのままメティスによって、残滓からどういう爆発なのかを調べて貰った。



【魔法名は『グランドクロス』光属性魔法の最強魔法の一つなんだけど、残滓から考えて威力を考量すると、通常の『グランドクロス』より三倍は強いわ】



 成程……光属性魔法・・だったのか。


「リサ」


「はい」


「『グランドクロス』という魔法に聞き覚えはある?」


「あるわ、光属性魔法の最強魔法で、輝く十字架により、周辺を……消滅……させ…………まさか!」


「うん、大爆発はその『グランドクロス』に間違いない」


「そ……そんな……この魔法を使えるのは……」


 どうやら、リサには思い当たる人がいるようだ。


「私かお母さんなら…………魔法の補助員が居れば、使えるかも知れない……でも補助無しでは絶対に無理」


 そもそもリサにもセシリアさんにもここを消滅させる動機がない。




「そうとなると……あと残る一番可能性があるのは――――教皇」




 成程……教皇なら信者達を使い、魔法の補助員もいるし、最強魔法をも使えるのか。


「寧ろ、今の状況を考えると、教皇か、もしくは、皇帝だと思う」


「皇帝はないと思うわ」


 セレナお姉ちゃんがそう話した。


「先日対峙した皇女さんは「戦わなければならない理由がある」と言っていたわ。もし、皇帝がこういう事をするなら、あの皇女さんが止めるはずよ、戦ってみて分かったわ」


 セレナお姉ちゃんがそう言うなら間違いないはずだ。


 昔からこういう事は凄く当てるからね。



【ご主人様!】


「うん? どうしたの、ソフィア」


【えっと! 向こうが大変な事になってるよ!】



 ソフィアが示した方向は、帝国軍が布陣している場所だった。



「向こうが大変な事になってるらしい! ちょっと飛んで見て来るよ」


「あ、私も行く!」


 セレナお姉ちゃんも行くとの事だったので、僕はお姉ちゃんを抱いて、空を飛んだ。



 飛んで行った先には、多くの帝国兵達が連合軍に向かって進軍していた。


 休息を取っていたはずでは?



 そんな彼らはある言葉を発していた。



「グランセイル王国に鉄槌を!!」


「グランセイル王国に天罰を!!」


「アカバネ大商会に鉄槌を!!」


「アカバネ大商会に天罰を!!」



 彼らをずっと繰り返し呟きながら、ひたすら前を進んでいた。


 このままだと明後日には連合軍とぶつかりそうだった。


【クロウくん、彼らは一種の催眠術にかかっているわ】


 やはり……、機械みたいに同じ言葉を発しながら、前だけを向いて歩いている彼らを普通の状態とは、とても思えない。


 これも教皇の仕業なのか……。






 それから僕達は、一旦、アカバネ島に戻り、作戦を練る事にした。


 島に着くと、第二陣営を守ってくれていたお父さんとお母さんが顔を出してくれた。


 お父さんとお母さんは何も言わず、僕を深く抱きしめてくれた。


 そして、笑顔で、守っている第二陣営に戻って行った。


 お父さん、お母さん、僕を心配してくれてありがとう。


 でも、もう大丈夫、僕にはお姉ちゃんが付いているから。



 一旦、状況を整理してみる。


 現在帝国軍は催眠術により、連合軍を目掛けて進んでいる。


 あと二日後……約四十時間後にぶつかり合うはずだ。



 この戦争の裏には、どうやら教会の教皇が絡んでいるようだ。


 更に、ホフヌス町を消滅させたのも教皇の可能性が高くなった。


 この戦争を止めるには、教皇を倒す事が大前提となってきた。



 それと、現在帝国内では『転移の結界』が張られており、『転移』系の魔法が使えない。


 なので、教皇がいると思われる帝都グランドまでは歩きになる。


 歩きと言っても、僕の飛行魔法で飛んでいくけど。



 僕達は五時間程、仮眠を取る事にし、一旦仮眠を取った。



 仮眠が終わり、集まった僕達に、ダグラスさんからとある薬を渡された。


 本来なら十六時間活動して、八時間睡眠を取るのが人の基本だ。


 でも、今回のように、睡眠を取る暇がないときに使う薬だそうだ。


 効果は、眠り時間を二日後にまとめて出すモノらしい。


 二日後、十五時間くらい眠る事になるけど、二日しか時間がないので、服用する事にした。


 依存症がある薬なので、多用するのは危険だから、使うのは今回限りだ。


 まあ、依存症も実は『ソーマ』で回復出来てしまうけどね。





 僕達のチーム分けが決まった。


 教皇強襲隊は、僕、リサ、セシリアさん、ソフィアの四人。


 防衛隊は、セレナお姉ちゃん、ディアナに残って貰う事になった。


 ディアナはどうしても一緒に行きたいと言っていたけど、行けないのには理由があった。


 ディアナが獣人族だからだ。


 帝国は未だ獣人族に対する当たりが強い。


 もし、帝国内でそういうトラブルになって、時間が取られるのを避けたいからだった。


 帝国軍の相手は、『戦慄の伯爵』と『帝国の剣聖姫』を中心とした多くの将がいるから、防衛も非常に大切な任務だ。



 こうして、僕はリサとセシリアさんと共に、帝国を目指した。



 ――――本陣衝突まで、あと34時間。



 ※212話付近の初戦は両軍共三割の戦力のぶつけ合いでした。


 ※そのため、連合軍も帝国軍も将が少ないように見えたと思いますが、実際は数倍規模の戦争です。

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