207.予期せぬ事態発生

 僕にとって三度目の学園祭が開かれた。


 今回も勿論、リサと一緒に『託児所』に参加した。


 それと、どうやら『オペラ』を講演した組がいるようで、物凄い噂になっていた。


 先日、僕に見せてくれた彼らだろう。


 彼らは、僕からの推薦で面接をして、上手くいったようで、『アカバネ魔道具』が貸し与えられていた。


 卒業して、すぐに『オペル』となり、『オペラ』を勉強するはずだ。


 いつか、ステージで彼らを見れる日がとても楽しみだ。




 ◇




 学園祭が終わって数日後、予期せぬ大変な事態が起こった。


 大陸の東側から、大きな台風が大陸を襲ってきた。


 台風なんて、ここ数十年起きた事がないらしく、珍しい天災だそうだ。


 その台風により、多くの帝国・・の町が犠牲になった。


 不思議な事に、グランセイル王国も、間にあるフルート王国も一切の被害を負っていなかった。



 帝国内はパニック状態になっていた。


 南東貿易街ガイアが中心となり、その対応に当たっていた。


 勿論、うちの商会支店もその町にあったので、いち早く状況を把握する事が出来た。



 幾ら帝国の動きが怪しいとはいえ、天災で多くの帝国市民達が苦しんでいる。


 グランセイル王国とフルート王国は、直ちにアーライム帝国に応援の許可を求めた。


 アーライム帝国でも快く受け入れてくれたので、速やかに助けに行ける事が出来た。




 ◇




 アーライム帝国の南東部。


 大災害により、多くの町は壊滅的に崩壊していた。


 全ての家は吹き飛ばされ、巻き込まれた住民達の多くが大怪我をしていた。


 幸い、台風の規模が大きかった事もあり、東空に台風を見つけた多くの帝国民達は全力で西に逃げ延びていた。



 アカバネ大商会の救助隊がアーライム帝国南東部に着いた頃には、悲惨な状況だった。


 また、教会の回復士達も来ておらず、怪我人で溢れかえっていった。


 そんな状況に、アカバネ大商会の総帥の命令が下った。


 ――「人命を最優先せよ」


 それは救助隊だけが許されている指示だった。


 彼らには、もし戦争になった時の為、多くの人の命を救うべく、とある権限が預けらている。


 それは――――『ポーション』スペースの引き出し権利だった。


 勿論、自由に引き出せる訳ではない。


 総帥、副総帥、もしくは、オーナーの指示がなければ、彼らは自分の命が尽きようとも、その権利を使う事はない。


 その権利を解放する指示。


 それが「人命を最優先せよ」だ。




 数日掛け、アカバネ大商会の救助隊による救助が完了した。


 高性能のポーションを惜しみなく使い、人命を救った彼らを帝国民達は称えた。


 その後、現聖女様のセシリアが現れ、多くの人々に勇気の炎を燈した。


 ただ、セシリアは帝国の教会の高僧のはずが、着ている服はアカバネ大商会の制服だった。




 ◇




 大災害が起きてから一か月後。


 アーライム帝国南東部では復興支援が行われていた。


 帝国内、グランセイル王国、フルート王国、テルカイザ共和国の多くの人々が復興支援に訪れていた。


 被災者達への炊き出しや、寝床確保、散乱している廃材の処分を懸命に行っていた。


 全ての廃材はアカバネ大商会が処分する事にしていた。



 その復興支援を象徴するように、南東貿易街ガイアの更に南東に位置する場所に新たな町を建設した。


 まだ町と呼べる程のモノはないが、アカバネ大商会の速すぎる建設速度も相まって、凄まじい速度で建設が進んでいた。



 その中、一際目立つ美男子がいた。


 彼の名はイカリフィア・ハイランド。


 美しい顔立ちをしているが、れっきとして男性だ。


 サラサラの赤い髪が風で揺れる彼は、現在建設中の町『ホフヌグ希望町』で復興支援を行っていた。


 ここ一か月、彼は親友であるクロウティアの心配をよそに、この町でずっと復興支援を行っていた。


 自分が誰かを傷つけようとした過去。


 それを払拭するかのように、彼は復興支援に勤しんでいた。




 アーライム帝国南東部で復興支援が行われている最中。


 多くの者達が想像すらしていなかった出来事が起きる。


 それを予想していた者は、極僅かな一握りの人だけだった。




 ――――世界は大混乱に包まれるのであった。




 ◇




 アヤノさんから緊急の連絡があったとの事で、アカバネ島で待機をしていた。


 現在、アヤノさんには帝国を探って貰っていた。


 そんな彼女から緊急の連絡が入ったそうだ。


 しかも、その緊急連絡が入ってから、本人からは一切の連絡がないという。


 取り敢えず、何があった時の為に、アカバネ大商会の重要メンバー全員集まった。


 後はアヤノさんから連絡が来れば――――




 いきなり、ソフィアが目の前に『次元扉』を作った。


 あまりの突如に僕達は驚いた。


 しかし、それからもっと驚く事態が起きた。


 開いた『次元扉』から血まみれの女性が一人、飛び出してきて倒れた。


 そして、すぐに『次元扉』は壊された。




「アヤノおおおおお!!!!」


 ダグラスさんの悲痛な叫びが響いた。


 血まみれになっており、左腕がないアヤノさんだった。





――後書き――――――――――――――――――――――――――――――――


日頃、愛読して頂き、心から感謝申し上げます。


本話を持ちまして、『学園と王国編』の終わりでございます。

そして、明日から遂に、あの編が始まります。

ここまでとても長かったような…短かったような気持ちでございます。


既にこの話の内容から察しが付くとは思いますが、次の編からは今までの話しとはガラッと雰囲気が変わると思います。


重ね重ね、ここまで毎話読んで頂きまして、心から感謝申し上げます。

ありがとうございました。

これからも『被虐待児の最強転生して優しい家族に囲まれ』をどうぞ、宜しくお願い致します。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

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