198.トイレですが何か?

※タイトルはとある神作のオマージュであり、作者様に許可を得ております。何故かというと、その作品を読んでいて、異世界で良くあるこの話を書くのを忘れ…………思い付いちゃったからです!





 学園祭も無事終わり、セシリアさん考案の紅茶とケーキを『アカバネ商会』のブランド品にする事が決まった。


 但し、作り方は既に公開する手はずになっている。


 アカバネ新聞にその作り方を紹介して、無料で新聞を配る計画がたっていた。


 掛る費用は全て僕のお金からお願いした。


 そもそも僕の貯まりに貯まったお金――使い道が全くないので、こういう風に使えるなら本望だなと思えたからだ。



 実は、学園祭の前に『ホットケーキ』と『ロイヤル紅茶』が決まった段階で、ナターシャお姉ちゃんの提案で、アカバネ商会直営の喫茶店を開く事にした。


 学園祭の後、すぐに開店予定にしていて、既に看板商品『ロイヤル紅茶』『カステラケーキ』『スマイルケーキ』が主力に、幾つかのケーキも準備して開店していた。


 何故、こんなに簡単に進んだかと言うと……。


 先日発表した『天使の輪』契約に、個人の料理人達からも挙って参加したいと言われていたのだ。


 偶々簡単に準備が出来そうだったので、急ピッチで作業が進み、『アカバネ喫茶店』が各地で開店した。




 ◇




 そして、本日。


 僕はリサから呼ばれて、屋敷の会議室に来ていた。


 セシリアさんも一緒に待っていた。


 リサ曰く、隣の部屋にお母さんとディアナとダグラスさん、ナターシャお姉ちゃんが待っているそうだ。


 何故別部屋なのだろう?



 リサとセシリアさんが真剣な表情で、僕を見つめてきた。


「くろにぃ」「クロちゃん」


 うん、声が見事に揃ってるね。


「う、うん」


「実は今日は、どうしても大事なお願いがあるの」「あるの」


「は、はい、どんなお願いでしょう?」


 それにリサとセシリアさんは少し顔を赤めた。


 ――そして。


「――――、トイレを作って欲しいの!」「の!」


 ええええ!? トイレ!?


「えーっと……トイレなら、あるでしょう?」


「うん、この世界のトイレは、全てああいうモノしかないでしょう?」


 ああいうモノとは、便器と呼ばれるモノの奥にスライムを入れて、スライムに分解して貰っていた。


 でも、そういうのは貴族御用達で、平民達はそうもいかず、簡易式のモノに集めて、大型トイレで捨てる方式を取っていた。


 アカバネ商会も屋敷もエクシア家屋敷も全てこの貴族御用達トイレを組んでいる。


「えっと、今日お願いしたいのは、こんな感じの便器なの」


 セシリアさんから渡された紙には、洋式便器が書かれていた。


「あ~、洋式トイレが欲しかったのね」


 それを聞いた二人は大きく頷いた。


 そして、セシリアさんからとんでもない注文をされた。




 ◇




 遂にセシリア式トイレ――もとい、アカバネ式トイレが完成した。


 形は前世で見ていた洋式トイレと全く一緒だ。


 しかし、驚く事に、セシリアさんから提案された技術を取り込んでおり、その画期的な提案にはとても驚いた。


 どうやら、前世の未来ではこういう風になっていたとセシリアさんは言っていた。



 僕達は完成したトイレ便器を持って、隣の部屋に来た。


 不思議な形をしたモノを持って現れたので、四人も興味津々に見つめていた。


「はい! こちらが――――新型『アカバネ式トイレ』です!」


「「「「トイレ!?」」」」


 四人はとても驚きながら、便器をじーっと観察した。


「使い方は、座って用を足して、立ち上がると終わりな感じです。そして、この右手側にある魔石ボタンを押すと――――どうなるかは、是非体験してください! 因みにまだ僕も体験してないので、どんな感じなのかは分かりません」


 セシリアさんの案内で、会議室の脇に個室を作って、便器を設置した。


 実際、本当に使う訳ではないが、どんな感じになるか体験する事にした。



 このトイレ、下に落ちた『汚物』を感知して、異空間『汚物スペース』に捨てられる事になる。


 ソフィアには申し訳ないけど、間違っても分解・・しないようにお願いした。


 分体でも……何となく……ね?


 そして、僕達はセシリアさんに使い方の説明を一通り聞いて、順番で例の『右手側魔石ボタン』を体験する事になった。




 ※クロウくんの全力霧属性魔法が掛っております。


 先ず、お母さん


「ひゃん!? ああっ、こ、これは!!」


 ナターシャお姉ちゃん


「ひっ!? ひゃ!? あ、ああ、そ、そういう事ね」


 ディアナ


「ッッ!?」


 ダグラスさん


「う、うわあああ、ぬ、ぬあああ」


 僕


「ひっ!? あ、あぁぁ」





 王国だけでなく、隣国の共和国まで『アカバネ式トイレ』の賃貸が爆速で進んだ。

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