173.祭りが終わり②

 本日はイカリくんに島の案内をした。


 何処に連れて行っても驚くイカリくんがとても可愛かった。


 最後は勿論、魔道具研究所だ。


 マリエルさんとペリオさんに迎えられ、色々説明を聞いていた。


 僕は良く分からない単語が聞こえていたので、ソファーで紅茶を飲んで待っていた。



【クロウくん~~】


 お茶を飲んでいると、メティスの声がした。


【メティス~、何だか久しぶりだね?】


【そりゃそうよ、クロウくんったら、次から次へ新しいの子を連れ回っているんだもの】


【あはは、それは誤解だよ~】


 そんな久しぶりのメティスと話しながら待つことにした。


 どうやら、最近ではソフィアの身体に乗り移っており、本体は常に僕に付いているようだけど、ソフィアの分体を利用して、色んな箇所を見て回っていたそうだ。


 ソフィアの分体は僕の大切な人の殆どに付いているので、色んな町が見れたと喜んでいた。


 そんな中、イカリくんが帰ってきた。



「おかえり~」


「ただいま~」


【また女の子!? しかもめちゃくちゃ美人さん!】


【違うよ! イカリくんは確かに可愛いけど、男の子だよ!!】


「あれ? クロウくん、どうしたの? 面白い顔になっているよ?」


【嘘!? こんなに可愛いのに!?】


「う、ううん、何でもな――」


【本当だってば!】


【信じられない! こんな可愛い男の子がいるなんて!】




「確かにイカリくんは可愛いけど!!!」




「え?」


【まあ、クロウくんの方が可愛いからいっか】


 もう~、全く、いっか! じゃないんだから……




「あれ? イカリくん、どうしたの?」


 イカリくんがジト目で僕も見つめてきた。


「クロウくん? 悪いんだけど……、僕、その……、男はちょっと……」


「えっ!?」



 メティスへの言葉が漏れていたのに、全く気付かなかった。




 ◇




 イカリくんに『メティス』を紹介した。


 存在さえ分かれば、メティスの力で話せるようになるので、すぐ納得してくれた。


「ふう……クロウくんが急に変な事言うんだから、誤解したよ」


 少し顔を赤らめたイカリくんが話した。


「うう……全部メティスのせいなんだから……」


【私はただ事実を述べただけよ!】


「事実?」


【そうなのよ! クロウくんったら、すぐに新しい女の子を連れて来るんだから】


「あはは、クロウくんはモテモテだからね~」


「ええええ!? 僕全然モテないよ?」


 イカリくんとメティスがジト目になった。


 ええええ!? なんで!?




 ◇




 イカリくんと王都支店に戻って、いつでも王都支店から島に遊びに来ていいと許可も出しておいた。


 そういえば、イカリくんは寮生活だったらしく、昨日祭りだったから家族と過ごしたと報告していた。


 まあ、家族なのは間違いないからね。



 それから王都を少し歩いてみた。


 予想通り、服屋が凄く繁盛していた。


 安価なのも相まって、物凄い売れ行きのはずだ――が。


 あれ?


 この服屋さんは人が全然いない?


 どうしたんだろう……。



 僕は恐る恐る、その服屋を覗いてみた。


 入り口の看板に『完売』と書かれていた。


 えええええ!?


 まだお昼過ぎくらいですけど!?


 早くも完売している服屋が現れていた。


 これは……もしかして『アカコレ』って、僕の想像よりもずっと凄かったのかも知れない。 




 ◇




 その日の夜。


 ダグラスさんから緊急会議の招集があった。


 ――――まさかね。



「緊急会議を始めます。議題は――全ての町の服屋が……『完売』しました」


 完売ねー、全て……の?、町……?


 ?????


 僕がポカーンとしていると、


「本来なら三日分のつもりでいつもの三倍を卸していたのですが、まさかの初日で完売しました」


 えええええ!?


 通常予定の量の三倍でも完売なの!?


 それからダグラスさんに売上やら色々聞いたけど、僕には何一つ耳に入らなかった。




 ◇




 現在、ナターシャは、次回の『アカコレ』のために奮闘していた。


 今回の『アカコレ』はナターシャの予想通り、大成功に終わった。


 たった一日で、商会の想定を遥かに上回る売上となった。


 勿論、次回からの『アカコレ』は今回程の規模にはならないだろう。


 なんせ、今回はクロウティアやセレナディアが参加したからである。


 次の『アカコレ』の参加者『モデル』を探すため、奮闘していた。




 そして、意外と人気に火が付いたのは『オペル』の五十四人だった。


 彼らは平民よりも、貴族に受けが良かった。


 アクロバティックな踊りだけでなく、五十四人による美しい歌が貴族達に高く支持された。


 たった一日しか経っていないが、まさかの王国宰相様からナターシャに、『オペル』の件で商談があると連絡が来ていた。




 ◇




 次の日。


 王国宰相様との商談から帰って来たナターシャお姉ちゃんと『オペル』のリーダーのクラウディさんから相談があると言われた。


 王都支店の総帥室で二人を迎えた。


「!?!? 少年!?!?」


 あ……うん、やっぱり初対面は大体そうだよね……。


「クラウディくん、こちらアカバネ商会のオーナー様であるクロウくんよ」


「こ、これは……失礼しました……、まさかオーナー様が……これ程若い・・方だとは思わず……」


「大丈夫です! 昔から慣れているので――、どうぞ、二人共掛けてください」


 ナターシャお姉ちゃんと、驚いた表情のままクラウディさんがソファーに座った。


「それで、相談があると?」


 僕が尋ねると、ナターシャお姉ちゃんとクラウディさんがお互いを見て、頷いた。


 そしてクラウディさんが口を開けた。


「実はこの度、王都宰相様から『オペラミュージカル』を定期的に開いてくれないかと、ご商談がございました」


 えええええ!? 王都宰相様から直々に!? 凄い!!


「それで、オーナー様にお願いがございます」


 クラウディさんは改め、真剣な表情になった。


「定期的にと言っても、我々の公演は全て『アカバネ商会』の魔道具と協力が無ければ、開く事は不可能でございます」


 確かに彼らの公演は僕が作った『拡音魔道具マイク』と『 付着型拡音魔道具インカムマイク』無しでは不可能だろう。


「それで、お願いというのは――我々『オペル』に投資をしては頂けないでしょうか」


「投資??」


「はい、これから公演が定期的に披露出来れば、恐らく多くの収入が見込めると思います……、我々『オペル』は全身全霊で『オペラミュージカル』を作りあげました。これも全て……大恩義ある『アカバネ商会』に貢献したいためでございます」


「え!? アカバネ商会に大恩義??」


 『オペル』さん達は『テンツァー踊る者』さん達と違って、全然支援とかされてきてないと思うんだけど……。

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