114.合同練習の準備
入学して数週間、初めてのナイトクラスの合同練習の日だった。
ナイトクラスの戦士科と魔法科による合同練習をするのだ。
戦うだけではなく、連携の練習の意味も大きい練習だ。
戦士科から前衛、魔法科から後衛としてパーティーを組む。
人数の問題もあるが、基本的に前衛三名、後衛一名で組むのが普通であった。
そんな中、始まって直ぐ、僕は強烈な殺気を感じた。
その先には、先日、僕に絡んで来たあのエレンと言う生徒が睨まれていた。
ディアナは生徒ではないので参加出来ず、訓練場の観覧席で待っていた。
そしてパーティーが決められ、戦士科のAクラスBクラスCクラスから各一人ずつと組む事となった。
Aクラスから中級斧士のグリオくん、Bクラスからポリスくん、Cクラスからピナさんだ。
「は……初めまして、Bクラスのポリスです」
「わわわわわ、わたしは……ぴぴぴ、ぴなともうしまっ、あっ」
「ぼぼぼぼぼくはグリオともうしまっ、あっ」
何だか三人とも物凄く緊張している。
「初めまして、魔法科Cクラスのクロウティアです、よろしくお願いします」
「おおおおおお会い出来て、ここここ光栄ですっ」
グリオくんがそう言うと、隣の二人共大きく頷いた。
あれ? なんで光栄なんだろう??
「えっ……と、皆さん、僕なんかに光栄だなんて……」
「ええええエクシア様にお会い出来て、ここ光栄です……」
ああ~、そうか、僕は一応大貴族だった。
それから挨拶も終わり、お互いの陣形を確認した。
これから相手側のチームと対戦する事になる。
全部で六十チームもあるようだ。
戦士科は全員木剣等の木で出来た武器を持っていた。
しかも刃の部分にジェル状のモノが塗られており、相手に当たっても痛くなくするとの事だった。
いくら訓練且つ木剣とは言え、生徒が振り回すと凶器になりかねない。
それを防ぐための手段のようだ。
魔法使いは耐魔法用防具を着用している。
僕達のパーティーは満場一致で僕がリーダーとなった。
Aクラスの中級斧士グリオくんは、中々の火力役になりそうだった。
Bクラスのポリスくんは、下級職能の狩人で速さに自信がありそうだから遊撃役だ。
最後にCクラスのピナさんは下級職能槍使いだ、長槍を使って近づけさせない盾役をして貰おう。
「では、まずピナさんが盾役をお願いします」
「ええ!? 私がですか?」
「クロウティア様、失礼だとは思いますが」
「グリオくん、今は仲間です。皆さんもクロウと呼んでください。あと――言葉も普通に話そう」
「えっと……、うん、分かった。クロウくん、ここは俺が盾役になった方が良いと思うんだけど」
「いや、グリオくんは斧士として、この中で一番の火力がある。なので切り込む方が良いと思う」
皆、僕の作戦に首を傾げた。
「先ず、戦いが始まったら僕が土壁を作るから、ピナさんは長槍で相手をけん制しつつ、接近させないようにして貰って、ピナさんに近づこうとした相手をポリスくんがけん制する。二人は基本的にずっと、けん制しながら戦う事、決して接近で戦わない事ね!」
「うん!」×2
「そして、グリオくんは、相手の前衛が一人か二人近づいて来たら、そのまま相手の後衛に突撃、後は僕が前後見ながら合わせるね」
「分かった!」
それから数組訓練が行われた。
殆どのパーティーは剣士科のAクラスの前衛を盾に魔法科一人で殲滅する方法を取っていた。
僕は魔法って便利なモノって意識だったけど、どうやら皆は違うようだ。
どちらかと言えば魔法は
「グリオくん、何故みんな、上クラスの方が盾役をしているの?」
「え? そりゃ……上クラスの方が強いからだろう?」
「え? 強いのに何で盾役をするの?」
「ええ? 強いから盾役をする……んだよ?」
う~ん、どうやら皆の考えと僕の考えが違うらしい。
確かに専用の盾役ならば、その役が一番適しているだろう。
しかし、戦士科の殆どは盾役として適していない。
見る感じほぼ全員火力役の方が合っている感じだ。
そんな長所を盾役で潰すのは勿体ないと思ってしまう。
なので、僕は攻撃に一番リーチのあるピナさんに、リーチを利用してけん制盾役を任せた。
しかし、皆の心配はいくら長槍を持ってけん制してても、飽くまでけん制にしかならない。
相手の進撃は止められないという事だった。
彼らの不安もあるが、それを防ぐのが僕の役目だ。
時間が進むにつれて、他のパーティーの訓練が次々終わって行く。
僕の作戦を聞いた三人は大丈夫かなとずっと心配していた。
しかし、この訓練、勝ち負けが目的ではなく、あくまてパーティー戦を学ぶのが目的のはずだ。
そんな中、訓練場が大きくざわついた。
現在訓練中のパーティーの決着が着いたようだ。
勝ったパーティーにはあのエレンくんが入っていた。
どうやら、エレンくんはAクラスのようで『中級戦士』と言う希少な職能のようだ。
『戦士』職能は他の『剣士』や『槍使い』『斧使い』とは違い、特定の武器に特化していない代わりに、身体能力が上がるスキル構成になっている。
だからと言って『剣士』のような、武器に特化した職能より上位かと言うとそうではない。
しかし、身体能力が上がると言うのはそれだけで脅威な事だ。
言い換えれば、何でも出来る、と言えるからだ。
勝ったエレンくんは真っすぐ僕を睨みつけた。
ええ……、何で僕ばっかり……。
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