113.アリサの妙案

 風呂後、旅館の食事中、リサがとんでもない発言をした。


「くろにぃ、この旅館、何で混浴・・ないの?」


「へ?」


 ちょっと!? リサさん??


「え? その『コンヨク』って何?」


 ナターシャお姉ちゃんが直ぐに突っ込んできた。


「こ、こ、こ、こ、混浴なんて!」


「あれ? でもここってくろにぃの旅館なんでしょ? くろにぃをもてなすなら混浴が一番では……」


「すとーーーーっぷ! それ以上はダメだからね!」


 そんな僕達を見て皆クスクスと笑っていた。


「セシリアさん~、『コンヨク』って何?」


「あら~、ナターシャさんは混浴に興味が?」


「ええ、何だか……とても興味深い言葉だったから」


「そうね……ふふっ、混浴って言うのは男女が一緒に入れる風呂の事を言うんだよ」


「ブフーーッ」


 お父さんが聞いた瞬間、お茶を吹き出した。


「え!? 一緒に入るの!? 本当に?」


「ええ、しかも……誰でも良いというのがミソね」


「誰でも……つまり、クロウくんと一緒に入れるって事?」


「ええ、そうなるわね」


「ブフーーッ」


 今度は僕がお茶を吹き出した。


 そして、ナターシャお姉ちゃんが色っぽい表情で迫って来た。


「ねえねえ、クロウくん?」


「え――――っと、何でしょうかナターシャお姉様」


「ふふっ、『コンヨク』作ろうよ」


「いや! 絶対いやだ!」


「ええ!? いいじゃない、クロウくん専用・・でいいのよ?」


「いやいや、それどこの罰ゲームだよ! ナターシャお姉ちゃんの……は――だ――」


 もう想像するだけで心臓がどきどきしてきた。


「裸なんでなんぼでも見られていいわよ?」


 ナターシャお姉ちゃんの爆弾発言で数人吹き出した。


 ナターシャお姉ちゃん……積極的過ぎる……。


「でも、混浴って水着混浴とかあるから、それなら大丈夫じゃないかしら?」


「ミズギコンヨク? セシリアさんそれ詳しく!」


「ええ、水に入っても透けない丈夫な下着・・を着用して入るの」


「へぇ! それはとても名案ね!」


「ふふっ、混浴って喜ぶ男性が多かったみたいだから、そういう事を考えた人もいたみたいよ?」


「凄いね! とても良い情報をありがとう!」



 それから食事中、ナターシャお姉ちゃんに言われるがままに『コンヨク』を作る事になった。


 但し、『水着着衣限定』でね!




 ◇




 次の日、


 ダグラスさんに『コンヨク』の件を伝えた、ちゃんとナターシャお姉ちゃんの案だと言って。


 ダグラスさんから、またとんでもないモノを考えましたねと言われた。


 本当だよ! もう!




 それから程なくして五階の風呂の階の左右の男女風呂とは別に『コンヨク』という風呂が設立された。


 しかし、旅館は基本クロウティアの許可無く入れないので、実質クロウティア専用風呂となったのだった。


 クロウティアは全力で霧属性魔法を掛けていた。




 ◇




 ◆セシリア・セイクリッド◆


 漸く、前世の息子クロトと今世で巡り会えた。


 可愛らしい外見の男の子だったわ。


 今世ではクロウティアって名前らしい。


 そんなクロちゃんだけど……物凄くモテモテだったわ。



 アカバネ商会の唯一のオーナー様で、あの名家のエクシア家の三男で、特別職能があり、何でも出来る子だった。


 前世の時も、あの子はとても賢くて、色々聞かれたけど、私では全然答えてあげれなかったのを覚えているわ。


 そんなクロちゃんだけど、アカバネ商会のナターシャさんから猛烈なアプローチを受けている。


 旅館で聞いたら、何やら間も無く命を落とす寸前だったのに、助けてくれた上に、『アイドル』にまでしてくれた大恩人だって……。


 しかし歳の差が……と思ったけど、クロちゃんを見てるとまんざらでもなさそうね。




 そんな折、私の娘のアリサ、前世では妹だったリサちゃんも、最近ではクロちゃんにべったりだった。


 確かに前世では兄妹だったけど、今世では違うので、変な誤解をされないといいけど……。



 そう言えば、いつもクロちゃんの隣にいるディアナちゃん――。


 どうやら専属護衛として雇われているらしいけど、聞いてみたらナターシャさんと同じで、病気で命を落とす寸前だったのに、家族ごと助けられ、アカバネ商会で仕事もさせて貰い、今では家族で平和に暮らせるようになったって……。


 あぁ……うちのリサはその中で、ちゃんと居場所を作れるのだろうか……。


 確かに前世の記憶があるとはいえ、今のままでは娘の居場所が……。


 正直前世の事を忘れて、今の状況を冷静に分析して、ここは娘にクロちゃんの……。


 ――――それは高望みでしょうか。



 そんな事を思っていると、ナターシャさんから、もしかしたらセレナさんも……と言われたわ。


 え? 彼女……クロちゃんのお姉さんだよね?


 恋に国境はないと言うけれども……。


 この世界では十五歳から結婚するのが、普通となっているから後三年ね。


 どうにか三年以内に娘とあの子をくっつける事を考えなくちゃね。



 そう言えば……ナターシャさんって歳はおいくつかしら?


 えっと……今年で二十五歳ね、ふふっ、まだまだ若いわね。


 クロちゃんとは十二歳離れているのね。


 え? 私は今何歳かって?


 えっと……十五でリサを身ごもったから、今は二十八歳だわ。


 歳も近いのでお友達になりたい? 本当に!? 嬉しいわ。


 私……もしかしたら初めてのお友達かも知れないわね。



 まあ……前世の歳を足すと…………。




 三桁――――。

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