104.アカバネ
◆シスターセシリア◆
私が気が付くと、そこは真っ白で綺麗な世界が広がっていました。
長年、教会で働いていた私にはここが天国ではないかと思えました。
そんな事を思っていると私の前に優しそうな白髪のお爺様がいらっしゃいました。
そうは言っても私もお婆ちゃんですが――しかし私の姿、若返っているようでした。
「ほっほっほっ、初めましてじゃの、日本の『聖女』様」
「あら……私なんて『聖女』様と言われる資格なんてありませんわ……貴方様は神様でしょうか?」
「ほっほっほっ、其方達の世界の言葉でならそうだね、わしは『神』と呼ばれる存在だの」
「そうでしたか……遂に私に
「罰……かの?」
「はい、私は自分の子供達を見殺しにしました。ですから罰を与えてください」
「ふむ、しかしあれは不運な事故じゃろうて、其方が罰を受ける必要はないじゃろう」
「――――、ですが私は……」
「ほっほっほっ、あれから五十年、ずっと人々のために頑張ってきたからのう、其方はまさしく『聖女』じゃ、しかしこのまま其方に消えて貰う事は出来ないのじゃ、其方にはまだやって貰わなければならない事があるのじゃ」
「私にですか……そうですね、私に出来る事なら何でもしましょう」
「ほっほっほっ、良い心構えじゃ、では其方には新しい世界で生きて貰おう。思う存分其方が生きたい人生を生きて欲しいのじゃ」
「私が生きたい……人生ですか? …………しかし私はもう……」
「いや、其方はまだやり残した事があるじゃろ? それを新しい世界で新しい人生で頑張ってみると良い」
神様の言葉が終わると、私の意識は少しずつ遠のいで行きました。
そして、私は新しい世界に……アルテナ世界に転生する事になりました。
◇
私が生まれた時、皮肉にも名前がセシリアでした。
前世の名前のままなんですね。
そして私は前世の知識があるため、現状自分がどんな立場なのかすぐに理解出来ました。
それから色々あり――――気が付けば子供まで出来ました。
私は前世の事から一度も男性とそういう事をしていません。
寧ろ自分にそういう事をする資格があるとは思ってませんでしたから。
しかし、十五歳になるとそれすら無視し私のお腹には子供が出来ました。
そして、子供が生まれた時、こんなに嬉しかった事はありません。
元気に泣く私の子供を……もう一度私の子供をこの腕に抱く事が出来るなんてまるで奇跡のようでした。
◇
子供が五歳となり、職能が魔法使いとの事で周りから子供が蔑まれるようになりました。
娘はとても賢くて、すぐにそういう事を感づいてました。
もしかしたらこれがきっと私に課せられた罰なのでしょうか。
ですので私は子供を全力で守ると決めました。
すぐに枢機卿会議で子供が十二歳になる年に教会を離れると告げました。
もし、その前に子供は亡くなる事があれば自害するとも脅しておきました。
猛反対されるも私はもう教会にはいたくなかったので、一切掛け合いませんでした。
勿論、子供が十二歳になるまでの七年間は出来るだけ教会のために働くと言う事で折り合いが付きました。
子供が十二歳になる年、私は病気と偽りの公表をしてグランセイル王国の王都学園に子供を入学させ共に王都に来ました。
学園には『現聖女様』の娘として入学をお願いし秘密にしていただきました。
教会はエクシア家とは犬猿の仲ですが、王国内では未だ絶大な効果もあり、私の滞在を喜んでくれました。
しかし娘が入学してしばらく顔色が良くありませんでした。
きっと学園に馴染めなかったのでしょう……。
神様、どうか娘に力を貸してくださいと毎日祈りました。
そんな折、数日経った娘が何処か可愛らしくもカッコいい男性と仲睦まじく話しながら歩いてくるではありませんか!
ああ、こんなに喜ばしい事なんてあったのですね。
そして彼と挨拶をしました。
彼は自分の事を「クロウ」と言いました。
クロウ……クロの名前を聞くといつもクロトくんの事を思い出しちゃう悪い癖が出てしまいます。
更に数日が経ち……。
何となくクロトの事は頭から離れられず、町をぶらぶら歩いていました。
そんな中物凄い繁盛しているお店がありました。
その名前は……『アカバネ商会』――――。
私は心臓が止まりそうになりました。
だって、この世界に『アカバネ』って苗字なんて聞いた事がありません。
もしかしたらと、ずっと
自然と私の足はその店に吸い込まれました。
テキパキ動いている店員さん、何処か前世の企業努力が垣間見える店内、そして何より『アイドル』という言葉……。
そこで私に気づいた店員さんが声をかけてくれました。
「えっと……私、客として来た訳じゃないんですが、一つ質問しても……いいですか?」
と聞くと話せる範囲でしたら何でも聞いてくださいと言われました。
「この商会の……オーナー様はアカバネ
と聞くと、店員さんが驚いた顔になり「いいえ? 違います」と話してくれました。
そうですか……違ったのですね……少し残念ですがそう都合の良い偶然なんてないですよね。
そうしていると店員さんから「もしや、
それを聞いた私は少し動揺していましましたが「いいえ、ありません」と答えました。
しかし、すぐに私の隣には帝国騎士様以上に強そうな方たちに囲まれてしまいました。
「申し訳ございません、お客様。こちらの勝手な
と言われました。
ああ、これは逃げられないやつだなと諦め、悪意も感じられなかったので彼女の指示に従い、豪華な部屋で待たされる事となりました。
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